2005/9/12
いったい、この呪縛はなんなのだろう。そして、なぜ、この呪縛は避けがたい
のだろう。
それは森から海へ広がる。限りなく広がりながら閉じられた森のように、果て
しなく続くように思えながらもう一つの岸辺に打ち寄せる海のように、わたしたち
を幻惑させながら呪縛する避けがたいものの運命が、雲のように、海と森の上
に垂れ込める。あなたの日記は、最初にそのことを私に予感させ、書くことの
ほうへ私を追放してしまったのだった。 「岸辺のない海」
そう、わたしは書きつづけるだろう
書きつづけることが、まるであなたへの愛のあかしでもあるかのように
わたしもその小説の主人公と同じように、追放されたのかもしれない
書くことのほうへと
そして、わたしは再び、書くことのはじまりに向かうだろう
あなたの〈愛〉にうながされて?思えばあなたの愛はなんと潔癖なことか
そしてわたしがとらわれるこの避けがたい呪縛
しかし、なぜ、この呪縛はこんなに甘美なのだろう
消しては書いて、書いては消してを繰り返す、その繰り返しの酩酊船
この夏に行った場所のこと、もうすぐ刊行される単行本のこと
ゆうべ見た夢のこと、ある日の午前、ふと訪れる軽いめまいのこと
そんな日々のあれこれが、いずれ書かれることになるだろうし
あるいは、いっさい書かれずにおかれることになるのかもしれないけれど
そんな書くことと書かないこと、存在と不在、夢とうつつのあわいのなかで
わたし(たち)は、ある種の愛に包まれながら、抱擁しあっている...
そして...わたし(たち)は、迷路のような見知らぬ街を、
でもどこか懐かしく既視感に満ちた街を彷徨いつづけることになるだろう
〈……そのような円環のなかで、きみとぼくはぐるぐるまわっているのだよ……〉

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2005/9/6
書きたいことはたくさんあるのに、なかなか書けない。ここのところしばらくの間、そんな状態で穴ぼこにはまり込んでいました。夏休みの旅行から帰ってみると、日本はもう秋の気候になっていました。留守をしていた間に、夏は終わっていたのです。そして、放りっ放しにしていた仕事は私を見過ごしてはくれませんでした。久しぶりに肩の凝る毎日が続きました。でも、それも山を越えたようです。ようやく私も手紙を書くことができそうです。
あなたから宮古に行くというお話を聞いて、うらやましかったです。これといった計画もなくただお酒を飲んで砂浜に寝そべっているなんて最高なヴァカンスじゃないですか。
一瞬、私の眼の前に、以前行った砂山ビーチの眩しいコーラルの浜の風景がひろがりました。それに、泡盛はやはり宮古が一番美味しいのです。さんご礁で出来た島の地下ダムに蓄えられた天然水が酒造りの決め手になっているのでしょう。
9月の沖縄は、台風さえ来なければ、湿度も低くさわやかで、もちろん泳ぐにも十分な気候ですから、素敵な休暇をお過ごしになってるだろうと思っていました。そう、台風さえ来なければ、この時期の沖縄は10月の中ごろまで本当にいい気候なんですよね。
宮古に渡れなかったのは残念でしたけど、無事に沖縄を旅されたということで、何よりです。
ちなみに、写真は宮古ではありません。北部の本部半島の先端の浜から見た伊江島です。
2年前の1月、この日は本当に穏やかな天候で、夕暮れの凪の海が鏡のように輝いていたのでした。それにしても宮古の写真はどこにいったのだろう。
そんなふうに、南のほうに思いを馳せながら、わたしは毎日を過ごしていたというわけです。
あなたが「遠い」と感じられるのは、多分、あなたの魂(まぶい)がまだ沖縄にあるからではないでしょうか。わたしのほうは先ほどのようにああだこうだと思いをつらねながら、非常に「近い」感覚を持ち続けていたのですよ。
でも、言葉で感じることができる以上、言葉が滞れば、感じも遠ざかるというのは無理もないことなのですけどね。
わたしはといえば、穴ぼこにはまり込みながらも、金井美恵子を読み続けています。
とうとう目白5部作のほうへ突入です。取りあえず、持ち歩きつつ読み進めるために、ばらばら文庫本を買いながらクロニクルには順不同に読み進めていますが、もうすぐこの旅も『道化師の恋』を読み終えておしまいです。次はまた久しぶりに『恋愛太平記』かなと思っていたら、いつの間にか本屋から文庫がなくなっています。どうしたことでしょうか。
それにしても目白もの、読み返すほどに面白いのです。最初に読んだときよりも、ずっと面白い。登場する各人のキャラ立ちがいい。続けて読むからいろいろな物事のつながりが見えてきてなお面白い。わたしには、予備知識として目白という街のイメージがあまりないので、ちょっと実際どんなところなのか再確認したいという気持ちがこうじてきました。気候も涼しくなることだし、できれば一度目白をゆっくり散歩してみたいという気分なのです。
あなたのCallが嬉しくて、急にまた長々と書いてしまいました。
でも、ほら、もうこんなに、すっかり近くなったでしょ?


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