忘却の川へ流れ去る諸々をしばしこの岸辺に繋ぎとめて..日記についての日記、もしくは不在の人への手紙。
2009/6/30
水無月も終わりです。充実した楽しい月でした。
月が変れば、本格的な夏は眼の前です。
わたしにとって今年の水無月は、忘れられない月となりました。
これほど紫陽花を意識した年もなかったでしょうか。
情景とともに紫陽花の様々なイメージが浮かび上がります。
思い返せば一年ほど前、それは予兆として訪れ(音連れ)があったのです。
あれから一年、めまぐるしく物事が動いたような気もしましたが、
今はもう、すべて夢のようです。
季節は廻り、花は再び咲くでしょうか。
その願いを今年の紫陽花の記憶に託して…
雨上がり染まる なだらかな道 紫陽花の花が つづいてゆく
薄紫に蘇る いつか託した 願い
移りゆく空と 恋はつれづれ 紫陽花の花が つづいてゆく
あの日のあなたを 守りたかった さみしさの色は 拭いきれず
丸い窓から 水無月の いつかこぼれた 雫
誰かの涙が 滲んだような 紫陽花の花が つづいてゆく
廻る季節 眠る思い ゆらりゆらめく 月が見ていた
移りゆく空と 恋はつれづれ 紫陽花の花が つづいてゆく
誰かの涙が 滲んだような 紫陽花の花が つづいてゆく
「ミナヅキ」Lyrics &compose by MIMORI YUSA


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2009/6/27
そして23日は、彼女の「コンサート・ツアー2009 銀河手帖」が、大阪で初日を迎えたのでした。この日はあいにくの東京出張、コンサートは無理かなと思いながら、早朝の上りの新幹線の中で『銀河手帖』を何度も繰り返し聞き込んで溜息をついていましたが、なんと東京は午前中で仕事が片付き、大阪へトンボ返りです。そのおかげで初日の「コンサート・ツアー2009 銀河手帖」に恒例の当日券参加が果せました。
場所はなんばHatch、天井が高くて奥行きのない300人程度の小さな箱です。駆け込んだときには既に場内の照明が落とされ、席は最後尾の上手側でしたが、わたしの両側と遊佐さんを見通す軸線上の前3席が何故か空席で、のびのびとコンサートに臨むことが出来ました。
1曲目は新作から「道標」とふんでいましたが、新作2曲目の「扉」から始まりました。これも好きな曲です。彼女は鮮やかなブルーの衣装で登場です。相変わらずのびやかな良く通る声で「オレンジ」、「流線」と曲は続き、渡辺等率いるバックのミュージシャンのパフォーマンスも全開となりました。
CDと違い渡辺さんのベース音もよく響きます。新しいアルバムの「ショコラ」なども、特徴的なベース・ラインが前に出てきていい感じです。あと、ステージ上で目立っていたのはブラスの鈴木広司さんです。若いのに、サックスを主体にクラリネットやフルートもこなし、かっこよかったですね。彼のことをこれからひそかに日本のメル・コリンズと呼びましょう。
セットリストは、新譜の『銀河手帖』を中心に、懐かしい曲やライヴの定番曲が挟みこまれ、『銀河手帖』以外の曲もバンドに相性のいいジャジーな選曲が行われていたでしょうか。
途中、去年のCAFÉ MIMOでも出られていたノコギリのサキタハヂメさんのサプライズ参加もあり、新しいアルバムから2曲、一緒に演奏されていました。また、今回のアルバムの「ミナズキ」は去年のCAFÉ MIMOでまだ名前のない新曲「あじさいの歌」として紹介されていたことを思い出しました。
「冬の日のW.」の後半部、歌い終えた遊佐さんが舞台を退いた後もしばらくジャズ・セッションが続いて、次の曲で彼女が出てきた時は真紅の衣装も鮮やかに私的ハイライト曲の「道標」が始まり、たいそう心打たれました。生で聴く「道標」、スイング感とグルーヴ感がいや増して、美しい音が漲り感動的でした。いやいや来れてよかった。
「shine!」、「froria」、「Tell me why」、「ロカ」と怒涛の4連チャンで後半を盛り上げた後、ニューアルバムから「I’m here with you」でステージ本編の幕は閉じられました。
アンコールは、「ミネソタの卵売り」で始まり、次の曲が嬉しかったのが「窓を開けた時」。わたしが最初に聞いた彼女のアルバム『空耳の丘』からの曲で、歌の途中、なんとなく眼があったような気がして彼女に手を振ったら手を振り返してくれたような・・・
アンコール3曲目が、まだ聴いたことがなかったアイルランドのナイトノイズとの共作「Island of hope & tears」でした。これもすごくよかったですね。このバンドならでは選曲だったのでしょうか、非常にスケールの大きな曲で、オリジナルと聴き比べたいと思いました。
そして、最後は、予想通り「ピアニッシモ」で静かにステージの幕は引かれました。セットリストの要所要所でニュー・アルバムの代表曲が配置されていて、結構練られたセットリストだと感じました。
大阪は初日ということで、遊佐さんも曲を飛ばそうとしたり、バンドも出だしをやり直したり、おじさんのマイクのセッティングがなかなか決まらなかったりといろいろありましたが楽しいコンサートでした。今夜は東京のほうでも無事にコンサートが終えられたのでしょうか。残念なことにバンドスタイルのコンサートは東京でおしまいのようですが、これからしばらくは引き続きこのようなスタイルで楽曲がプロデュースされればいいなと思います。


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2009/6/26
前作『スヰート檸檬』から1年半ぶり、オリジナル・ナンバーは2006年の『休暇小屋』以来3年ぶりの遊佐未森の新譜『銀河手帖』が出ました。

今回のアルバム、プロデュースが私の大好きなベーシスト渡辺等だということで、その出来上がりに期待していました。たとえば、遊佐未森のヴォーカルに重ねて、時にスケルトンのウッドベースによるジャズ・フレーバーがトッピングされるとか、時にブリブリのフレットレス・ベースによるプログレッシヴな色彩が与えられるとか、時にマンドリンやブズーキでフォークロアな風味が醸し出されるといった、カラフルなサウンド・メイキングを期待していましたが、それは見事に裏切られ、裏方の職人芸に徹した素朴といってよいほどのベーシックな仕上がりになっていました。ベーシックというのは、遊佐未森の声と歌の良さを出来るだけストレートに引き出すようにバックのアンサンブルが構築されているということです。それでも達者なミュージシャンの集りなので音はそれぞれ個性的で、聴き続けるほどに味わいが増してきます。
このアルバムから1曲選べと言われれば、やはり1曲目の「道標」でしょうか、この曲のように「離別のノスタルジア」的感覚の詩を彼女特有の透明でリリカルな声にのせて歌われたら、今のわたしの気分としては涙なしには聞けません。ギターのアルペジオと精細なピアノが徐々に曲を盛り上げていきます。終曲の渡辺シュンスケのピアノ・ソロが白眉です。この曲にアルバムのエッセンスが全て集まっていると言ってもいいでしょう。
道標 風のにおい 雲の行方
どこまでも 続いていく 潤んだ空
気がつけば 踏み出してた つま先には
虹色に きらめいている 光の粒
君と歩いていた 道をひとりで
今は迷いながら 響く彼方へ
言葉にならなくて 遠くを見てた
川沿いの 土手ではしゃぐ 子供の声
過ぎ去った 夏の記憶 呼び覚ました
夢をためらわずに 思いのままに
いつかまた何処かで 君に会いたい
水面に映し出す 明日のわたし
ほんとうは 君の笑顔 胸の中に
どうしても 溢れている 思っている
道標 風のにおい 雲の行方
どこまでも 続いていく 潤んだ空 潤んだ空
「道標」Lyrics &compose by MIMORI YUSA

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2009/6/21
Earth, stream and tree encircled by sea 海に囲まれた大地と小川、木々
Waves sweep the sand from my island. 波が私の島から砂を浚ってゆく
My sunsets fade, 私の夕暮れは闇に溶けていく
Field and glade wait only for rain 草地や森の空き地はただ雨を待っている
Grain after grain love erodes my 一粒ごとに愛は蝕んでいく
High weathered walls which fend off the tide 私の島に打ちつける波を防ぎ
Cradle the wind to my island. 吹きつける風を和らげてきたこの私の壁を
Gaunt granite climbs カモメ達が滑空し旋回する
where gulls wheel and glide 険しい花崗岩の登り道
Mournfully cry o'er my island. 私の島中に悲しげに響くその鳴き声
My dawn bride's veil, damp and pale, 夜明けの花嫁のヴェールが淡く青白く
Dissolves in the sun. 陽光の中に溶けていく
Love's web is spun - cats prowl, mice run 愛の網が張られ−猫は追い鼠は逃げる
Wreathe snatch-hand briars 刺々しい茨でリースを織る
where owls know my eyes フクロウが私の目を知るところ
Violet skies 菫の空よ
Touch my island, touch me. 私の島に手を触れて 私に触れて
Beneath the wind turned wave 風が波に変わるあたり
Infinite peace 永遠に安らぎ
Islands join hands 島々は手をとりあう
'Neath heaven's sea. 神の海の下で
Dark harbour quays like fingers of stone 闇に覆われた港の埠頭は
Hungrily reach from my island. 私の島から懸命に伸びる指のよう
Clutch sailors' words, pearls and gourds 真珠やひさごが浜辺にちりばめられ
Are strewn on my shore. 船乗りの言葉を掴みこむ
Equal in love, bound in circles. 愛は等しく環の中に閉ざされる
Earth, stream and tree return to the sea 海に還っていく大地と小川、木々
Waves sweep the sand from my island, 波が私の島から砂を浚ってゆく
From me. 私のもとから
“Islands” Lyrics by Pete Sinfield, perform by King Crimson
この曲を君と聞いたときのことを今も思い出す。
過去の曖昧な記憶から、僕は、
島は海の上では孤独だけれど、母なる海の下では互いに手を取り合っている、
ということをこの曲は歌っているんだと、君に言ってしまったのだけれど、
実はこの曲の詩の意味はもう少し複雑なようだ。
その後、この詩が、イギリスの詩人ジョン・ダンJohn Donne (1572-1631)の
『瞑想録』にインスパイアされたものだということを知った。
その中には以下のような一節がある。
「何人も孤立した島ではない。いかなる人も大陸の一片であり、全体の一部である。
一塊の土くれが海に洗い流されても、ヨーロッパがもとの姿を失わないように、
あなたの友人やあなた自身が洗い流されたとしても、それが無に帰するわけではない。・・・」
さらに、戦場で亡くなった者の弔いの鐘は全ての人々に鳴り響くと詠われることで、
鐘は犠牲者のためだけではなく、生き残った我々のために鳴り響いているのだと続く一節が、
ヘミングウェイの小説のモティーフになったということは知られた話だ。
それはさておき、今一度、僕はこの詩を少し深読みし、恋愛詩として読んでみよう。
象徴詩である限り、そこには様々な観念の枠組みを与えることができるだろう。
だから、この読みは、僕だけのきわめて個人的で恣意的な読みでしかない、
そのことは僕も承知しているつもりだ。
僕は島、そして、君は海。
母なる海であり愛の始原としての君。
自分では気づいていないかもしれないが、
君という存在は強い意志とエネルギーをその内に秘めている。
僕はこれまで、自分の島の中でまずは不足のない生活を送ってきた。
そこへ君が現れ、平穏に安住していた僕の意識を揺り動かした。
円環のように閉じていた僕の部屋の窓が君に向けて開かれたことで、
僕というちっぽけな存在は揺り籠の様に大波に揺られ翻弄された。
君は愛の力で僕を蝕み、僕を掘り崩していく。
波が浜辺の砂を持ち去り、海岸を浸食するように、
見えないところでそれは今も続いているんだ。
僕の世界の中で遍くいきわたっていたはずの自己愛は、
荒波のような愛の前では脆くも崩れ去る運命にあった。
そして、今度は僕が君のほうへ指を伸ばそうにも、
その力は弱々しくて、君には届きそうにない。
海はただ島をあらうばかりで、大きな潮はいつのまにか通り過ぎて、
今はただ死のような凪があるばかり。
それでも僕は感じている。
海の下の見えないところで、今でも君に向けて手を伸ばそうとしている自分を。
僕は理解している。
意識をより深く潜らせることで、より深いところで君の愛の重さを確かめられることを。
意識はより深く、そして、より高く天空に届かせるがごとく、
眼差はより遠く、波と風が交わる水平線を見つめて…
海の上では、空がその色を菫色から淡い青へと刻々と変えながら
やがて夜明けを迎えるだろう。
心がしんと静まる、平和な夜明けを。
全てが死に絶えたかのような平和な夜明けを。


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2009/6/18
変ることで残るもの
閉じることで貫くもの
星の数ほどそれぞれの 愛のかたち
離れることで繋ぐもの
消え去ることで響くもの
星の数ほどそれぞれの 愛のかたち
Hill of Tara
雨に濡れ
風に騒ぎ
泥に埋もれながら
浮かび来る 古の丘に
Hill of Tara
緑萌え
時を渡り
色あせながら
香り立つ 古の丘に
いつの世も
たったひとりの人に歌う調べ
悲しみの靴履いた
吟遊詩人の足音
失うことで見えるもの
手放すことで満ちるもの
星の数ほどそれぞれの 愛のかたち
“Hill of Tara” from 『Ave』 Music&Lyrics by Asuka Kaneko

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2009/6/14
7時半からの開演でライヴの時間はぴったり2時間ということだったので、アンコールのSahara of Snowが終了し、メンバーがexit stage leftしてしまうと早々にホールを後にしたのだけれど、出口のところで何やらホール・スタッフが呼びかけていて、こちらにお並びくださいということでオートマティカリーに前から6人目ぐらいのところに並び始めたら、何とエディ・ジョブソンのサイン会があるということだった。「えー、あれだけのライヴの後、疲労もあるだろうに早速サイン会とは、なんてファンを大切にするエディなんだー」と感激しつつ、緊張して彼の登場を待つこと10分、出てまいりましたよジョブソンさん。疲れも見せずにこやかに席についていらっしゃいます。
前に並んでいた人達はみな、てぐすね引いて待ち受けていたみたいで、購入したCDやTシャツどれかに一箇所だけサインのはずが、UKやZINCのアナログ・ジャケットなどにもたくさんサインをもらっている人もいて、それでも嫌な顔ひとつせずジョブソンさんは「やあ、グッドコレクションになったね」などとにこやかに応対されているのでした。ジョブソンさんに何と話しかけようと考えてる間に自分の番になり、その後の会話はだいたい以下のようなものだったと思います。
私:ほんと長い間あなたを待っていました。今夜は夢がかないましたー
EJ:ほんと、長かったね、30年ぶりだもん。ひょっとして君、30年前のライヴも見てくれたの?
(と見上げたエディのサングラス越しの青い瞳に見つめられる私・・・)
私:いえ・・・イエース。見たよー
EJ:そうなの(You did?)
私:はい!また、ぜひ、お会いしたいです。
EJ:そうだね、会えたらいいね、また30年後にね。ははは。
私:・・・ははは。
という感じで、ほんとジョブソンさんは最後までカッコよくて、おまけにほんとに人が良さそうで気さくな好青年ぶりだったのです。もう、今まで以上に彼のことを好きになってしまいました。
ところが、その時、私は胸を少し痛ませていたのでした。
会話の弾みでついつい、30年前のライヴを見たと言ってしまった私。実は、そのライヴ、見逃していたんだよー。ジョブソンさんに嘘をついてしまいました、私。
ジョブソンさん、ゴメンナサイ。
新作CD、殺風景な風景写真のレーベルだったので、ここにサインしてもらいました。

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2009/6/13
英国プログレッシヴ・ロック界の貴公子、エディ・ジョブソン
以前この場所で彼を紹介したとき、「彼にもう一度ロックのフィールドでバンドを組んでもらって、是非日本のステージに上ってもらいたい」と書いていたのですが、なんと、その夢が30年ぶりに実現しました。6月10日、場所は、入梅の雨がそぼふる大阪アメリカ村はBIGCAT、前回のマグマの興奮からまだ2週間とたっていません。

今回は自由席ということで当日券での参加です。そんな人達の問い合わせが多かったようで、主催者側としては手狭になるパイプイスを並べるかどうか悩んだようです。イスなんていらないよスタンディング・オッケーの気分でしたが、仕事帰りの開演10分前に会場に飛び込んだところ、イスは整然と並べられ、ぎっしり人がつまっています。これは後ろのほうで立ち見かなと思っていたら、そこは自由席、中ほどの端っこの席が空いていました。舞台上手でここはエディの立ち位置とは対角ですが、少し遠めでも彼の顔を正面にとらえることができます。
場内見渡すと、なんだかちょうどいい大きさの箱にほぼ満杯の人が集まっています。オーディエンスはさすがに中年が多かったですが若い人も結構いましたね。もっと女性が多いかなと思っていましたが、マグマよりも女性率は低かったような。
すぐに場内が暗転し、クリムゾンっぽいダークなSEのシークエンスが流れてメンバーが登場、各ポジションにセットすると、UKの79年の日本公演を収めたLIVE盤『Night After Night』からの1曲目“Night After Night”でライヴの幕は開けました。ヴォーカルもジョン・ウェットンほどの骨太さはありませんが、UKの曲にそこそこフィットしています。そして何よりエディの中間部のハモンドのソロがカッコイー!期待を裏切らない出だしのパフォーマンスです。
2曲目、ぶ厚いヴィンテージなシンセ音が響き渡ると場内から歓声が上がりアラスカの始まりです。全身シンセのシャワーを浴びているようで体内の細胞が活性化してくるようです。“Time to Kill”のヴォーカルに入る直前で曲は“The Only Thing She Needs”へと移ります。この曲で今回のドラムの実力の程も伺い知ることが出来れば、やはり圧巻はエディのピアノ・ソロと鍵盤からヴァイオリンに持ち替えてのヴァイオリン・ソロ。全く演奏技術の衰えも見せず、オリジナル通りメンバー全員が完璧な演奏でした。
演奏後、来てくれて嬉れしい、30年ぶりの日本になってしまった、とのエディのMC、今回の日本ツアーにイギリスや南アフリカ、スウェーデンなど世界各国からやってきたコアなファンの紹介もありました。
3曲目、新しいEPからのスロー・バラードに続いて、エディ・ジョブソンのキーボード&ヴァイオリン・ソロです。彼のソロ・アルバム『Theme of Secrets』からのビー玉の跳ねるようなサンプリング音に導かれて、やはり彼のユニットZINCのアルバム『The Green Album』からのソロ・パートや“Theme of Secrets”のメドレーで、後半はエレクトリック・ヴァイオリンをディレー、フィードバックさせながら、弓でハンマリングしたり、手で胴部をたたいたりとノイジーなインプロヴィゼーション・ワークを見せてくれました。
それ以降は、他のメンバーをフューチャーしたデュオやソロの曲がいくつか続き、新曲のメタル・クリムゾン風の“Tu-95”で再びメンバー全員が揃うと、エディからメンバー紹介がありました。
Aaron Lippert (v)、キング・クリムゾンからTrey Gunn (b) Alex Machacek (g)はオーストリア出身、 Marco Minnemann (d)はドイツ出身です。とくに、ドラムのMarco Minnemannはアクロバティックなシンバル・プレイも挟み込みながら達者なドラム・ソロを見せてくれました。
ライブも佳境に入ってまいりました。次は『Danger Money』からの2曲、エレピのリフが美しい“Rendezvous 6:02”とエディ・ジョブソンの作曲・演奏とマルチなテクニックが遺憾なく発揮された大曲“Carrying No Cross”です。いやー、もう言葉にならないほど、感激もひとしおです。
そして新曲の“Radiation”の後、エディが前に出てきて7拍の手拍子を観客に煽ります。超盛り上がりのお約束定番“In the Dead of Night”の始まりです。「今日はありがとう、また会おう、すぐに」というエディのMCに導かれてお馴染のシンセのリフが聞こえてきたときには涙腺が少し緩みました。原曲に忠実な演奏が非常に嬉しく、ギターのAlexもアラン・ホールズワースばりのプレイを聞かせてくれました。
アンコールは、キング・クリムゾンの名曲、“Larks' Tongues in Aspic Part 2”から“Caesar's Palace Blues”ブラフォードの『One of a Kind』の中のエディの曲“The Sahara of Snow Part 2”の怒涛の3連チャンでコンサートの幕は閉じられました。いやー、久しぶりにクリムゾンの変拍子で見境もなく踊り狂った私でした。『USA』よりもパワー・アップしたエディのプレイに大満足、“Caesar's Palace Blues”のスケルトン・ヴァイオリンでのプレイもノリノリで、“The Sahara of Snow Part 2”がコンサート全体のコーダのように名残惜しくも今回のライヴは終わってしまいました。
今回のUKZ、若いメンバーに代わったことで、オリジナルのUKとは当然キャラも変ってしまいましたが、サウンド・メイキングに新機軸ももたらされ、何よりメンバー全員がバカテク揃いなので、今後のフル・アルバムの発表が期待されるところです。
そして、願わくば次回はもっと早い再来日となりますように。


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