忘却の川へ流れ去る諸々をしばしこの岸辺に繋ぎとめて..日記についての日記、もしくは不在の人への手紙。
2010/12/4
深まる秋、落ち葉がアスファルトの上をカラカラと舞っていきます。
先週金曜日、去年の銀河手帖ツアーから1年半ぶりに遊佐未森の歌を聴きました。今回は、小編成のアコースティックなバンド編成によるライヴです。
場所はbluenoteから代わって少しリッチな雰囲気になったBillboard Live Osaka。週末の仕事帰り、夜9時半からと少し遅めの二部のほうで、しっとりとした秋の夜長にふさわしいライヴとなりました。メンバーは以下の通りです。
遊佐未森
近藤研二(ギター)
鈴木広志(フルート、サックス)
吉野友加(アイリッシュハープ、コーラス)
ギターの近藤研二は、初期のころのツアーメンバーで、今年20年ぶりに仙台のステージで一緒になり、自然な流れでこのツアーに参加することになったとのこと。
鈴木広志は、銀河手帖ツアーのときの活躍ぶりも記憶に新しい若くて才能豊かなプレイヤー。
そして、今回もっとも楽しみだったのが吉野友加のアイリッシュハープの音色が曲にどのような彩りを添えるのかということでした。
二部公演なので演奏された曲は少なめですが、ゆっくりお酒を飲んでリラックスしながら、繊細で暖かみのあるアンサンブルに耳を澄ましていると、心身ともに浄化されたような感じになってヒーリング効果抜群のライヴだったというのが一番の印象でした。
ピアニッシモ
ショコラ
ripple
瞳水晶
冬の日のw.
つゆくさ
ハープ
クロ
野の花
Island of Hope and Tears
------ encore-----
I'm here with you
セットリストはだいたい、以上のようだったでしょうか。
ショコラやクロ、瞳水晶といったアップテンポの曲がかわいらしいアレンジになって、遊佐さんのヴォーカルもときに囁くように音に寄り添っているかのようでした。
「つゆくさ」や「ハープ」、「野の花」といった初期の懐かしい佳品もこの編成で生まれ変わり、アイリッシュハープの音色も歌声にぴったりフィットしていました。とくに「ハープ」での遊佐さんと鈴木くんの縦笛のデュオはこのステージのハイライトの一つでした。嬉しいことに昨年のコンサートで感涙した「Island of Hope and Tears」も再び聴くことができました。この編成にも関わらず、力強いアンサンブルでアンコール前の最後の曲として盛り上がりました。
このメンバーでのステージ、これからも機会があれば聴きたいですね。そして、いつかこのメンバーでの遊佐未森さんのセルフカヴァー・アルバムを録音して欲しいと切に思います。

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2010/11/23


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2010/11/7
このところ、世間はなにやらキナ臭くなってきました。
これから数年の間、何が起ころうとも、慌てふためくことのないよう
せめて心の用意だけはしておかねばならないのかなと思います。
いずれにせよ、これからもできる限り正確な情報を収集し、
自分なりに分析していくことが必要であろうと思われます。
昨日、ある映画がロードショー公開の初日を迎えました。
この件について、これまではWEB上での拡散がメインでしたが、
この映画の巷での受けとめられようによっては、
事態は新たなステージへと展開するのではないでしょうか。
http://zero.9-11.jp/index.html
映画を観る前に、以下のインタビュー動画もぜひ見ていただければと思います。
http://iwakamiyasumi.com/archives/2736

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2010/9/23
右手に夕空をバックに美しいシルエットの富士を見ながら真夏日の東京から帰ると、こちらは雨、中秋の名月は時折雲間から現れるばかりで、一夜明けてみれば強風・雷・豪雨の荒れ模様です。
今夜は満月で、おまけに土星-太陽-地球-月-木星-天王星が一直線に並びそれに冥王星と水星のラインが交差するグランドクロスという、天空は一大イベントの様相ですが、この天気ではそのスペクタクルを望み(臨み)ようもありません。
天気の良い地方にお住まいの方は、今夜満月のそばで一際明るく輝く木星がご覧になられます。50倍くらいの天体望遠鏡でも惑星の縞模様と近くのいくつかの衛星を見ることができるでしょう。
これから冬至に向けて徐々に日は短くなっていき、夏の記憶は扉の向こうに仕舞い込まれるでしょう。今年の夏の出会いや再会を今後どのようなかたちで育んでいけばよいのかまだよくわかりませんが、これから思索を深めるには良い時節柄、秋の夜長に様々なことに思いを馳せましょう。


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2010/8/22
見逃していた矢野顕子のドキュメンタリー「18年後のスーパーフォークソング 矢野顕子 歌とピアノと絆の物語」。録り置きしていた8/19の再放送を見る。
すばらしい。やっぱり、矢野顕子、最高のピアニスト。
スーパーフォークソングのビデオを見たのは10年くらい前だろうか。
ワン・ツー・スリーとリズムを刻みながら出だしのフレーズを何度も何度も繰り返すピアニストの姿。曲は「それだけでうれしい」。じっと耳を澄ますエンジニアの静かな佇まい。曲の中頃まで完璧な演奏がひとつのミスタッチで録り直しになる。ピアニストのいないところで、彼女は曲を途中で繋がせてくれないんだと苦笑するエンジニア。「一発録り」の真剣勝負、その現場の神々しさをカメラはモノクロームの光で定着させた。ピアノを弾く矢野顕子の美しさ、その指の動き、上半身をスイングさせながら、背筋から両肩を経て肘から手首を介して指先へと、美しい力動がなめらかに伝わっていくその姿に呆然と見とれるばかり。

正直、これまで自宅で音楽を聴くときにエンジニアの存在を意識することはなかったし、メディアで現場のエンジニアが前景化することはあまりなかった。音楽の制作現場から自身の演奏で活躍の場を広げたミュージシャンで、よく聴いたのは10ccだとかアラン・パーソンズ・プロジェクトくらいで、確かに彼らのアルバムの音はすごくよかったけれど、実際のところスタジオで演奏するアーティストの音がテープやハードディスクといった媒体に定着されるまでにどのようなケミストリーが生じるのか、私たちはそのことについてこれまであまりにも無関心だった。
現在までの矢野顕子の4枚のピアノ弾き語りアルバム、ライヴ一発録りということから、正直あまり録音エンジニアの出る幕があるのかとも思えるのだけれど、それぞれの場所のそれぞれのピアノとの対話から生まれる弾き語りアルバムの、その場の空気感も封じ込める現場監督としてのエンジニアの作業の重要性は私たちには窺え知れないものがあるのだろう。
SUPER FOLK SONG(1992) Home Girl Journey(2000)
PIANO NIGHTLY(1995) 音楽堂(2010)
今回の『音楽堂』の制作に際しても、エンジニアの吉野金次はひとつのアイデアを提示している。神奈川県音楽堂の10年物のコンサートグランドの低音を生かすことをねらいとして、ピアニストの左手側に二つのマイクを設置し、さらにピアノ低音の二つの音源を左右へ広がりをもたせて、その中に彼女の歌がくるまれるような音作りを考えたという。
矢野顕子の左手が奏でる音をとらえること。これはアメリカ音楽界の重鎮Tボーン・バーネットが2008年のアルバム『akiko』でもアルバムの音作りに際して焦点化したことでもあった。「顕子、君の左手が奏でる低音は強力だから、今回のアルバムはベーシストなしのセッションでいこう」それがアルバム制作の初期段階で彼が提示してきたアイデアだったという。エンジニアが音楽プロデュースに占める部分は決して小さなものではないのかもしれない。
吉野金次は、矢野顕子のピアノがますます成長してきているという。切ない詞を美しく歌い上げることに加えて、この5年でリズム感が格段に良くなってきたという。美しいけれども、儚いわけではない、力強さと凛々しさに満ちた音楽。これからも、矢野顕子からは目が離せない。
自分自身の数少ない矢野顕子ライブ体験の中で、彼女のピアノ弾き語りでもっともインパクトが強かったのは2000年7月18日の『Beautiful Songs』、2度目の大阪のパフォーマンスでの奥田民生の曲「すばらしい日々」で、この音源がおそらくCDに入れられたのだと思うのだけれど、久しぶりにアルバムをとりだしてみれば、これもエンジニアは吉野金次なのだった。

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2010/8/14
先週の日曜日8月8日、NHK-FMで正午過ぎから12時間のぶっ通しのラジオ番組“今日は一日プログレ三昧”が放送されました。私は当日外出していたのでこの番組を聞けなかったのですが、2chで親切な方が音源をupしてくれたので、先週はこれをiPodにおとして移動時間中ずっと聞いていました。NHK鹿児島でこれを録音していただいた方、ありがとうございます。
それにしても、NHKは思い切ったことをやってくれました。これまでも、昭和歌謡やアニソン、ヘビメタなどのテーマで行われてはいましたが、プログレという決してメジャーではないカテゴリーの音楽を一日中流し続けるというのは大英断でしょう。媒体としてのFMの新たな可能性を感じさせる画期的な企画ではないでしょうか。また事実、このような枠に長尺曲の多いプログレッシヴ・ロックというのはぴったりなのです。
今回は、パーソナリティの山田五郎氏をはじめ、清水義央氏(KENSO)や関根史織嬢(Base Ball Bear)などのゲストの面々のプログレに寄せる熱い思いがジンジンと伝わってきて、曲間のコメントや会話も楽しいものでした。失敗ジャケ買いのコーナーや清水氏の変拍子教室、クラシックの原曲との比較視聴などそれぞれのコーナーもツボにはまっていましたね。極め付けは、スタジオ・ライブのアルタード・ステーツのメンバーによる「クリムゾン・キングの宮殿」のアルバム完全コピー・ライブで、そこまでやるかという執念の凄まじさを感じました。

12時間で70曲余りのプログレがかかりましたが、終わってみるとまだまだ時間が足りないというのが正直なところ。それでも1曲目イエスの「危機」から始まった時にはこの番組にかける制作側の並々ならぬ思いが伝わってきました。ロゴタイトルはダテではなかったのですね。クリムゾンも後期はなくて最初が「アイランド」というのは、個人的にはグッときました。「プログレ好きって自分で詩を訳したりするんだよねー」という山田氏のコメントに頷く自分がいました。
夏にプログレは結構合うんじゃないかという話も確かにそうかもしれません。オザンナやアレアなどの熱い(暑苦しい)ロックを汗かきながら聴くというのもオツなものです。若くてかわいい関根譲がゴングやサムラ、タルなどについて嬉しそうに話しているのを聞くと日本の未来もまだまだ明るいと思えてきます。
個人的には、ケストレルやXレッグド・サリー、マンドレイクなど、持っていたまま長く聴かずにいたアルバムの再発見などもあってよかったです。鈴木慶一氏もアンソニー・フィリップスのファーストをリクエストしていて、さすが御大、目の付け所が渋いと思いました。私もこのアルバムは大好きです。ひとつ気になったのは、ELPのタルカスをカヴァーしたアーティストということで吉松隆や国府弘子、上原ひろみが話題になっていましたが、ピアニストの黒田亜樹の「タルカス&展覧会の絵」への言及がなかったこと。これは次回があればリクエストしましょうか。
それともう一つ、曲を取り上げるときにこれはプログレではないという言い方は極力避けたいところです。プログレというのは偉大な折衷主義の産物であって、いろいろな要素がハイブリッドに混交しているところが面白いところです。ですから、個人的にこれがプログレだと思えばプログレになるんですね。この曲のこういうところがプログレだ、ここをこう聴けばこれも立派なプログレだというスタンスのほうが、聴こうと思う音楽の領域が広がっていいと思いますよ。
最後に、番組にならって私的ジャケ買い失敗・成功のコーナーです。
左(ジャケ買い失敗):“ZYGOAT”Burt Alcantara
青が基調の幻想的で美しいジャケットアートに釣られて、スケールの大きなシンフォニック・ロックを期待したが、蓋を開けてみると何やらうねうねとしまりのないシンセ・ミュージック。北村昌士のライナーノーツも内容に困惑してか焦点の定まらない記述に終始している。
中(ジャケ買い成功):“Fully Interlocking”SOLUTION
オランダのグループ。本国では当時結構人気があったらしい。エッシャーやマグリットを思わせる幻想画とマッチして、音楽に派手さはないがAOR的でしっとりとした抒情派シンフォ。大阪のとある古レコード屋で安く手に入れた見本盤のお下がり。実際に店頭で見たことはない。
右(ジャケダサで内容も今一):“FUSION”Lockwood・Top・Vander・Widemann
なんだか安直なタイトルとジャケに抵抗を感じたものの、このメンツなら間違いはないだろうと思って購入した輸入盤。期待が大きすぎたのか、悪くはないが何だか煮え切れない内容でほとんど聴かずじまい。どうしてマグマの面々がこんな企画盤めいたアルバムを作ることになったのか。

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2010/7/25
季節は巡り、梅雨が明けたかと思えば夏真っ盛りで連日の猛暑です。
しばらく更新が滞っていました。何があったというわけでもなく、内外でシステムの入れ替え時期が重なり、あまり落ち着ける時間がなかったというところです。
個人的にはパソコンが新しくなり、WindowsがXPから7にかわりました。
OSが変わったからどうということもありませんが、各種プログラムの設定やデータを移行する中で、整理されていくものもあります。データの虫干し・煤払いです。
iTuneの音楽データを移行させたところ、読み込んだアルバムの幾つかがラベリングされず「不明」となったので、もう一度一から入れ直しです。
自分がこれまで聞いてきた音楽の中からまず100枚をインポートしました。
これが結構楽しくも、こちら立てればあちらが立たずと困難な作業になりました。原則、1アーティスト1枚として、思い入れの強いものを選び出しました。音楽に目覚め始めたころからこれまで30年以上にわたり聞き続けてきた中で、それぞれのアルバムにはそれを繰り返し聴いていた当時の記憶が張り付いています。
三つ子の魂百までといいますが、今も昔も驚くほど聴くものが変わっておらず自分の成長のなさを感じます。
以下がそのリストです。
1/10cc/The Original Soundtrack
2/Adi/GOLCONDA
3/Anekdoten/Vemod
4/Änglagård/Epilog
5/Area/1978
6/Asia/Asia
7/Atoll/L'Araignee - Mal
8/Banco del Mutuo Soccorso/Io Sono Nato Libero
9/Björk/Homogenic
10/Brian Eno/On Land
11/Brigitte Fontaine/Comme À La Radio
12/Bruford/One Of A Kind
13/Can/Future Days
14/Caravan/Cunning Stunts
15/Cluster/Grosses Wasser
16/Darryl Way's Wolf/Canis Lupus
17/David Bowie/Outside
18/David Sylvian/Brilliant Trees
19/Dream Theater/Metropolis Part 2: Scenes from a Memory
20/East/Hûség
21/Eddie Jobson/Theme Of Secrets
22/Emerson, Lake & Palmer/Brain Salad Surgery
23/Faust/So Far
24/Focus/Focus III
25/Francois Breant/Voyeur Extra-Lucide
26/Frank Zappa & The Mothers Of Invention/One Size Fits All
27/Genesis/Selling England By The Pound
28/Gentle Giant/Octopus
29/Gong/You
30/Hatfield & The North/Hatfield and the North
31/Heldon/Stand By
32/Holger Czukay/Movies
33/I Pooh/Parsifal
34/Il Volo/Essere O Non Essere ?
35/Iona/Journey into the Morn
36/Isildur's Bane/Cheval
37/It Bites/Once Around The World
38/Jean-Luc Ponty/Enigmatic Ocean
39/Jeff Beck with Terry Bozzio & Tony Hymas/Guitar Shop
40/Jim O'Rourke/Eureka
41/John Foxx/The Garden
42/John G.Perry/Sunset Wading
43/Kansas/Leftoverture
44/Kate Bush/The Kick Inside
45/KENSO/夢の丘
46/King Crimson/In The Court Of The Crimson King
47/Kit Watkins/SunStruck
48/Klaus Schulze/Timewind
49/Led Zeppelin/W
50/Magma/Live
51/Mahavishnu Orchestra/Visions Of The Emerald Beyond
52/Manuel Göttsching/New Age of Earth
53/Marillion/Brave
54/Mike Oldfield/Tubular Bells
55/Miles Davis/Bitches Brew
56/Mr. Sirius/Barren Dream
57/NOVELA/サンクチュアリ(聖域)
58/Opus Avantra/Introspezione
59/Osanna/Palepoli
60/Pat Metheny Group/As Falls Wichita, So Falls Wichita Falls
61/Patrick Moraz/I
62/Pekka Pohjola/Keesojen Lehto
63/Peter Gabriel/So
64/Pink Floyd/Dark Side Of The Moon
65/Popol Vuh/Hosianna Mantra
66/Porcupine Tree/Deadwing
67/Premiata Forneria Marconi/Photos of Ghosts
68/Queen/A Night At The Opera
69/Renaissance/Ashes Are Burning
70/Robert Wyatt/Rock Bottom
71/Roxy Music/Avalon
72/Rush/Signals
73/Sandy Denny/The North Star Grassman And The Ravens
74/Santana/Caravanserai
75/Slapp Happy/Slapp Happy
76/Soft Machine/Softs
77/Steve Hackett/Spectral Mornings
78/Sting/Nothing Like The Sun
79/Tangerine Dream/Rubycon
80/The Alan Parsons Project/Eye In The Sky
81/The Beatles/Revolver
82/The Doors/The Doors
83/The Police/Reggatta De Blanc
84/The Who/Quadrophenia
85/Thomas Dolby/Astronauts & Heretics
86/Trace/Birds
87/U.K./U.K.
88/Vangelis/Albedo 0.39
89/Weather Report/Mysterious Traveller
90/Yes/Close To The Edge
91/ザバダック/桜
92/新居昭乃/ソラノスフィア
93/上野洋子/*1
94/大貫妙子/SIGNIFIE
95/金子飛鳥/神話の時代〜TWELVE MYTHS
96/新月/新月
97/鈴木さえ子/科学と神秘
98/原田知世/music & me
99/矢野顕子/Love Life
100/遊佐未森/モザイク

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2010/3/28
このところ冷たい雨の日が続き、昨日の午前は久しぶりの燦然とした太陽を見ましたが、すぐに曇って肌寒い気候が続いています。先週末の春の陽気が懐かしくなります。
先週の土曜日は前日から出張で東京泊でしたが、午前中は時間が空いていたので、上野の国立博物館の長谷川等伯展に行ってきました。朝一で行こうと、宿は上野でとりました。朝8時にホテルを出て暖かな朝日を受けて不忍池を抜け、上野の森の散歩を楽しみながら東博に向います。桜の種類によってはすでに満開のものもあり、ソメイヨシノは芽が膨らんでいます。
東博の前まで行くとすでに門前は長蛇の列、チケットをまだ買っていなかったので、そこより30分早く開くという駅近くの公園案内所でチケットを購入するために引き返せば、そこも100人くらいの列が伸びていました。無事チケットを手に入れて館の前に戻るとすでに2000人くらいが列をなしていたでしょうか。そんなこんなでしたが、開館時刻を少し過ぎて入館できました。

等伯は去年の『対決巨匠たちの日本美術』でもいくつか見ていましたが、こうして生涯の作品を通して観て画家の偉大な力業をまざまざと見せつけられました。一幅の屏風と対面した途端、周りの人の多さも全く気にならないほどその作品に引き込まれます。極彩色の大和絵や力強い金碧画から蕭条とした水墨画まで、ダイナミックな構図や多彩な筆致とともに、この作家の芸の広大さがよくわかりました。
やはり、トリの「松林図屏風」は一つ抜けています。扱いも別格で、作品との距離をとって鑑賞するような計らいとなっていました。確かに、襖絵・屏風絵は一定離れて見たいところですが、このような展覧会ではどうしても作品の前に人が列をなして、なかなか思い通りに見られません。ですから、このような方法は理にかなったものでしょう。巨大な「仏涅槃図」も展示には苦労したことでしょう。

襖絵や屏風絵というのは、そのスケールといい多彩さといい、日本絵画における一大形式なのだなと認識した次第です。でも襖や屏風、障子などはすでにわたしたちの生活からほとんど消えつつあります。襖などあっても本来のものではなくダンボールやスチロール製のものが多くなり、上張りがビニールというものもあるようです。
展覧会は、4月には京都にやってきます。春まっ盛りの京都で再び等伯にまみえることができます。

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