
「ダイビング事故とリスクマネジメント」(中田誠著、大修館書店)を読んでいろいろと示唆を受けました。ダイビングはシーカヤックと比べるとはるかに高リスクなレジャーで毎年20名前後の死亡者・行方不明者がでています。事故遭遇率は0.01%前後ですが、事故発生したケースでの死亡・行方不明率が50%前後と極端に高くなるのはダイビングならではの特徴のようです。
死亡事故が多いためか裁判事例も多く、この本でも事故の内容とともに判例についての説明・解説が多く記載されています。
判例では、インストラクター・ガイドとしての注意義務を次のように指摘しています。
・絶えず客の位置、動静に気を配り、危険な状態に陥っていないかを確認する注意義務がある。
・受講生を水中で見失ってしまうことのないように、絶えずそばにいてその動静を注視する注意義務がある。
・参加者全員の動向を常に注視し、以上が生じた場合にはただちに適切な措置や救護をする義務を負う。
・受講生の動向を5秒から7秒に一度しか振り返って確認しなかったため動向の把握が不十分となり受講生を見失い事故を起こした。
※インストラクター・ガイドは片時も不用意に受講生のそばから離れてはならないということです。
また免責同意書についても
・同意書があるからといって、その合意が成立したと認められない。身体及び生命に侵害が生じた場合までインストラクターの責任を免除するとする合意は、公序良俗に反し、無効である。
厳しい内容ですが、主催者に参加者の安全を図る義務が課せられるのは当然ということです。
そして著者は、主催者が免責あるいは減責が認められる可能性のある方策についてまとめています。その方策を参考にシーカヤックツアーに置き換えてみました。
○適正なガイドレシオによる、指導者が講習生などの動静を常時監視できるような無理のないツアー編成をすること。
○実際のフィールドにおいて当日の海況などの自然環境を受けて、より安全なツアー計画に変更できるように事前に代替ツアー計画を立案して、事前にその旨を参加者に説明しておく。
○スタッフは事故発生を予想して定期的に勉強会や実施訓練を行い、事故への対応シミュレーションを積み重ねておくこと。実施状況及びその時の課題について記録しておくこと。
○参加者に対して当日のツアー計画と海況による代替計画の説明を行うこと。
○参加者に対して、シーカヤックツーリング中のリスクについて説明すること。
○集団で一緒に行動することの重要性を説明し、参加者が指導者の監視可能範囲から勝手に逸脱しない様に注意を促しその順守を強く指導・要請する。またその際の参加者の被るリスクについて説明する。
○当日の体調を含めて身体的問題について参加者の確認をとる。
○二重遭難を防ぐためにどの時点で事故者の救出活動を断念するかについて説明する。
シーカヤックに比べて事故が多い登山やダイビングからの事例を学びながらシーカヤックのリスク管理を考えるのは次善の策にはなるようです。

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