
釜鐶は、お茶を差し上げる前に炭を直す炭点前(すみでまえ)において釜を上げ下げするときに用いる道具です。茶席で使われるものですが、会記(茶事において用いられる道具の記録するもの)に記載されることもなく、客への拝見に出されることもない地味な道具です。鐶は釜の鐶付の穴に通して釜を上げ下げしますから2個で一組になっています。
鐶の形によって、大角豆(ささげ)、竹節、捻(ねじかん)、蜻蛉(とんぼ)、巴(ともえ)、轡(くつわ)などの様々な種類があります。
これらの中でも基本的なものは利休形の大角豆鐶で、大角豆のようなくびれがあり滑りにくくなっています。写真の大角豆鐶は鞘がやや薄くはありますが、鞘の元のガクの細工がなされており面白い仕上げとなっています。江戸時代末期の作品で作者は明珍宗廣です。

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