
鶴や亀は縁起物ということで茶道具には鶴・亀の意匠によるものが数多くあります。鶴の絵柄は茶碗に頻繁に見受けられますが、その中でも有名なものに釜山御本の立鶴茶碗があります。御本とは御手本となる切形や絵柄を造らせた陶器のことをいって、一般には江戸時代の初期頃に対馬藩倭館の釜山窯(1644〜1717に)で造られたものをいいます。
写真右の茶碗は御本立鶴写しで、対馬で御本写しを得意とされた陶芸家・玖須朋弘(1947〜1993)の作品で。私が対馬でお茶を習った川村先生は常々「玖須さんが早くに亡くなられたのが悔やまれましてね」と心から残念がられてました。
写真左の茶碗は小道具やで買ったもので箱には「松村弥平太」とあります。松村弥平太(〜1707)は対馬藩士で陶工頭として通算8年に亘って釜山窯へ派遣され、釜山の倭館で亡くなっています。中庭茂三とともにその作品(と言われているもの)が数多く残っています。釜山窯では将軍家や各地大名からの注文品(御本)だけでなくたくさんの陶器を焼いていたと言われています。この茶碗の鶴象嵌の自由奔放な絵柄や織部焼のような変形した形、類似品を見かけないことから判断すると少なくとも御本ではないように思われます。もっともこれが松村弥平太の真作かどうか、最も知りたいことも本当のところわかりませんが・・・。

北村美術館像の「御本立鶴茶碗、銘:池水」。徳川家光が立鶴の絵を描き、小堀遠州が形を指示して対馬藩に注文したものと伝わっています。現在でもこの写しが数多く作られています。

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