宮古島では、苗字でほとんど人を呼ばない。
たとえば、平良市民体育館でイベントが行われ、
「平良さん、受付までおいでください。」
なんてアナウンスすれば、おそらく受付が渋滞してしまうだろう。
同じ苗字が多いので、通称で呼ぶ事が多い。久松出身のヒロアキ、
アキヒロ、ヒロシ、ヒロノブなら久松のヒロ坊と呼ばれる。
これがまた苗字に次ぐ多さで、「久松のヒロ坊がさ・・・」
なんて話をすると「久松のどこのヒロ坊か?」となってしまう。
そんなときは屋号を用いて説明をするのがわかりやすい。
屋号がわかればの話だが。
宮古島で紹介を受けたとき「俺は下地(下地町)のコーチャンと
言えば、みんながわかるからよ。」なんて言われてもお酒の席なら、
それが宮古島、下地町で通じるかといえば、否・否、
ごく一部の仲間内だけで通じるだけだ。
よくお客さんが「昨日、居酒屋で地元の人と一緒になって、名前は
上野のアキ坊と言う人でした。ご存じでしょ。」
私の知っている上野のアキ坊と呼ばれている人だけで
数人はいる。そういう紹介を受けても間に受けないように。
酒の席では嘘をついているわけではないが、その場かぎりの話と
思った方がよい。
通称があれば、自称もある。ようするに他人から呼ばれている呼び名と
自分で思っている呼び名があると言うわけだ。
「俺は与那覇のモボと呼ばれている」と自慢する友人がいる。
モボとは戦後、進駐軍の影響を受けたモダンボーイの略称で、
おしゃれな男とでも言えばわかりやすだろうか?
しかし彼をモボと呼ぶ人はいない。
「自分でモボと言っている人を探しているんですけど」と
与那覇で聞けばすぐにわかる。
自分で自分のニックネームを付けるのも、おそらく同じ苗字が多い
からだろう。
