大阪の阪急電車に乗って二つ目の駅に母の店があり
幼い頃から酔っ払いを見てきた。
そこから二つ目の駅に生まれ育った町がある。
今でも誰かがその町の名前を出すと、知り合いかな・・・?
と思う。
共同トイレのアパートが立ち並ぶ町。
高度成長期に働く現場労働者が多く住む町。
そんな町の中でひときわ大きな一軒家の社宅に産まれた。
隣近所のオバハンが勝手に家に入ってきてテレビを見ながら
羊羹を食べているプライバシーもなにもない町全体が
知り合いのようなそんな町。
わずか18年間しか住んでいなかったが、町を出るとき、
もう二度とその町には帰らないと思っていた。
毎年のように大阪に行くが避けていた。
それが30年以上ぶりに帰る機会ができた。
町並みはすっかり変わっていたけれど、雰囲気は昔のまんま。
まるで昨日までいたかのような錯覚をおこす。
歳はいったが今でも店の前に立つ八百屋のオヤジ、店を息子に
譲ったのか魚屋の兄ちゃん
今も昔と同じように肉屋の前でコロッケをあげているオヤジ!
「オッサン久しぶりやな!」と声をかけると、
「戻ってきたんか?長い勤めやなぁ」とコロッケをくれた。
何か勘違いをしているみたい。
30年以上の月日なんてほんの数日間の出来事のように
受け入れてくれる。街で産まれた私には故郷なんてない
ものだと思っていたが、これが故郷なのかなぁ〜と思った。
どこにも戻る家はないはずなのに、
「ウチに泊まっていけ」とたくさんの人が声をかけてくれる。
そんな町から幼馴染が遊びにきている。
あの町を受け入れることが出来るまで長かった。
