宮古島の有名なダイビングポイントでもある「通り池」
昔、あるところに妻に死なれた男がいた。
男の子が一人残ったので、何とも仕方がなくて
後妻を貰った。後妻は、この子をけっこう
可愛がっていたが、やがて実子が生まれた。
すると、自分の産んだ子の方がだんだん
愛おしくなってきた。
“人の産んだ子に、この家を継がせてなるものか!”
その思いは、胸の奥から黒雲のように
沸き上がってきて、憎しみが日毎に増していった。
ある日、二人の子どもを「通り池」に連れていって、
池のそばまでやってきた。
あたりは闇に包まれていた。
兄には、「こちらに寝なさい」と池の外側に寝るよう命じ、
兄の横の、池側には、実子に寝るようにいいつけて、
海に降りて行った。
子ども達は、うとうとしかかったが、弟は背中が
でこぼこして気になって眠れない。
「兄ちゃん、こっち、でこぼこしてて、いやだよ」
兄は、「そうか、じゃこっちはでこぼこしてなくて、
上等だから、代わってあげようね」
二人は入れ替わった。
二人が寝入っている頃を見計らって、母親が戻ってきた。
自分が寝かせたところに、そのまま子ども達が
寝ているはずだった。
・・・池の外側に近づくと、声もかけずに子どもを
抱き上げ、通り池に突き落とした。
その子が、驚いて「助けてっ」と、叫ぶ声についで、
水しぶきの音を背にした。
かまわずに、もう一人の子どもを抱き上げ、
走って逃げた。
池側に寝かせた子が実子だと信じていた。
突然、腕に抱いた子が口を利いた。
「お母さん、アノ子(弟)、連れて行かなくていいの?」
継母はびっくりした。
“あ〜あ、何ということ!
わが手で自分の子を殺してしまった。”
継子を放り出すと、池の方に向かって走った。
狂ったように実子の名を呼びながら、
通り池に一直線に飛び込んだ。
通り池にはジュゴン伝説と人魚伝説、
そしてこの「継母伝説」がある。
言い伝えなのだが、実際にこの親子が寝たと言われる石がある。
