紙芝居師の広場

【聖都物語　試編２　15】

　結局のところ、イル殿は僕を見捨てたようなことを言っていながら、ちゃんと団に帰ってから、ミグさんの面倒をみられる人間をよこしてくれていたのだった。
「でも、だったら先に言ってくれれば……。せめて、官舎に入るときに戸を叩くなり……」

【聖都物語　試編２　14】

　帯を解き終えれば、今度は着物を脱がせなければならない。
「…………」
　やらなければならないことはわかっているが、やっぱりさすがにためらってしまう。
「ごめん、ミグさん。でもしかたないんだ……」

【聖都物語　試編２　13】

　必要なのはまずは布だ。それもできるだけ大きい……いや長い布がいいに違いない。
　僕はたたんだ洗い物の中から手ぬぐいを引っ張り出した。
「これじゃ短すぎるな。結んで使うか？」

【聖都物語　試編２　12】

　ミグさんが眠っている。
　寝台の上に身体を横たえて、目をつぶったまま身じろぎもしないでいる状態を「眠っている」と言っていいのなら、いまの彼女は確かに眠っているのだった。
　しかしかれこれ半日、ミグさんは「眠った」まま。目覚める気配もない。
「ミグさん、起きてくれ」

【聖都物語　試編２　11】

「お嬢ちゃんが倒れたってのは本当か？」
　官舎にやってくるなりイル殿が言った。
　お嬢ちゃんというのはもちろんミグさんのことだ。イル殿とはいくらも歳は違わないくせに、彼女に対しては妙に年上ぶるところがある。