紙芝居師の広場

【聖都物語　試編２　25】

　さっき天井から落ちてきた布も、着ていた着物を脱いだのではなく、同じように引き裂いたのだろう。
　僕の足下辺りに落ちているかつて着物だった布の残骸の誕生過程が理解できた。といって、そのことがわかってもさして事態に変化があるわけではなかったが。

【聖都物語　試編２　24】

――い、いけないっ。
　なんとかミグさんを押しのけようと僕はもがいた。
　なにがいけないって、ミグさんの身体の甘ったるい匂いと、大きな胸の膨らみの感触がいけない。ああ、僕の股間はこんなときだっていうのに、あってはならない反応を示してしまっていたのだ。
「ミグさん、離して！　だめだ、だめだって！　ねえっ、だめなんだっ、ミグさんっ」

【聖都物語　試編２　23】

　もちろん最初からそれがミグさんだとわかっていたわけじゃない。
　いきなり天井から飛びかかって来られて、その勢いで、床に思い切り背中を打ち付けたときに、飛びかかってきた相手が誰かなんてすぐに分かるものじゃあない。すくなくとも僕には無理だった。

【聖都物語　試編２　22】

　もう夕食の支度どころの騒ぎじゃない。
　といって、官舎を出て行ってミグさんを捜し回る、というわけにもいかない。
「やっぱり、残るのはほかのひとに替わってもらえばよかった……」

【聖都物語　試編２　21】

「探さなくちゃ」
　まだあの神の素性はなにもわかっていないのだ。いまの彼女がどんな行動に出るか、皆目検討がつかない。だが部屋を出ようとする僕の腕をシントラさんがつかまえた。