ここでくじけてはいけない。保護者として、保護者としての責任を−−!
「やっぱり着物脱いじゃいますね」
「へ? あ、ああうん」
あっさり向こうから言われて、僕はかくかくうなずいた。
「濡れたままじゃ風邪引いちゃいますから。だから先生……」
「うん?」
「……あのお」
「なに?」
「あの……恥ずかしいです……」
「うわっ、わあっ、ごめん!」
そっとうつむくミグさんから僕は慌てて顔をそむけた。
「向こう向いてるから……っ、だから……か、風邪ひくといけないし……ね」
返事の代わりに濡れた着物を脱ぐ気配。
よかった。とにかくよかった。案ずるより生むが易しじゃないか。
いつも僕をからかってばかりいるミグさんだって、こういうときはちゃんと当たり前に対応してくれるんだよ。
ははは、空回りだったな。なにやってるんだろうね僕は。
はは……。
……。
……。
……?
「ミグさん?」
「はい」
声は僕のすぐ耳の後ろから聞こえた。

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