不思議な色の髪だ……。
それが彼女を見たときの最初の印象だった。
まるで夕日を反射してきらめく大河の水面のような透けるような輝くような不思議な色合い。
しかしそう思ったのも一瞬のことで、次の瞬間にはごくあたりまえのみどり髪になってしまっていた。
見間違いだろうか。
なにしろ僕の目ときたらうつつのことを見るにはろくに役に立たないのだから。
「評判聞いてきたんだけど、おいしそうねえ」
僕はうなずき返した。
「おいしいですよ。具らしい具はないのにこの汁がいいから、麺だけで充分美味い!」
「へえ、へえ!」
彼女は子供のようにはしゃいだ調子で手を打った。
もう少女という歳ではなさそうだと思っていたのだが、さてほんとうの年齢はいくつだろう。女性の歳はなかなかわからない。
幼く見える時もあれば、ときとして年ふりた賢者のように振る舞うときもある。
僕のそんな頓着に気づいた風もなく、さらにまじまじと麺の器を覗き込んで、それから
「おじさん、この人と同じものちょうだい!」
と手をあげた。
次回へつづく
『聖都物語』は、不連続な連作でお送りしています。
食べてる場面ばかりでもない、これまでの作品は「『聖都物語』メニュー」から

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