実にまあおいしそうに食べる。箸を休めていた僕の口にさえ、美味しさが拡がるようじゃないか。
考えてみればそうだなあ……僕の周りにはものを美味しそうに食べるひとが多い気がするぞ。
あのンクララさまもそうだし、ミグさんもイルどのだってそうだ。あの妙なおさむらいもそうだったなあ……。
ふと、兄さんの顔が浮かぶ。
あのひとは、お酒を飲んでるときもあまり美味しそうな顔はしなかったっけ。いつも難しい顔して、いろんなことに「間違ってる」って言ってた……。
そんな兄さんに僕は憧れてたんだけど……。
「少し大人になったってことじゃない?」
「え?」
いまの、僕に言ったんだろうか? いや疑うまでもなく、この大卓には僕と彼女しかいないんだけど……。
次回へつづく
『聖都物語』は、不連続な連作でお送りしています。
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