【女傭兵、途方に暮れる】
「探すと言ったって、どっちにいけばいいのやら」
途方に暮れて街道を歩いているのは、傭兵を生業にしている女さむらい、マーリウ。
さる王に雇われて、〈神々の楽器〉なる神器の捜索を仰せつかったのだが、これが雲をつかむような話だった。
「神々の楽器」は、その名の通り、神気の宿った楽器で、鳴らすことで様々な神の業を為すことができるという。
ところがしかし、分かっているのはそれだけで、その楽器がどこにあるのか、全部でいくつあるのかもわからない。
ただ、間違いなく実在しているという証拠には、王の手元にひとつだけ〈スーゲイの笛〉なる「神々の楽器」があり、それは確かに強い神気が宿っていると、神人、呪い師がこぞって保証してくれている。
だから、ないことはないはずなのだが、その行方に関してはなんにも分かっていない。
「これじゃあだまされたようなもんだなあ」
ため息をつくマーリウだが、これはちょっと言い過ぎだ。
王は、充分な路銀を渡してくれたし、捜索の手がかりとして〈スーゲイの笛〉さえ彼女に預けてくれたのだ。
ずいぶんな信用ぶりといえるだろう。
もっとも、「なぜその神器を集める気になったのか」については教えてもらえなかったのだが。
こうしてマーリウはあてどのない旅をしているわけなのだが、少しばかり急な上り坂を登り切ったところで不意に脚を止めた。
なにか胸騒ぎというか、笛が気になるのだ。
虫の知らせというか神の知らせというか。
神々というのは気まぐれに人間にちょっかいを出してくることは、もちろんマーリウも知っている。
もしや笛に宿った神(ないしその神気)が自分に伝えようとしていることがあるのでは、と懐……本人は胸の谷間だと主張している……から取りだした。
高価そうな袋のひもをほどいて笛を取り出す。
「むう」
笛自体に特に変わった様子はない。
だが「なにかある」という感じはいっこうにおさまらない。
少し考えて、マーリウはこの笛を吹いてみることにした。
大きく息を吸い込んで、笛に息を吹き込む。
――――――。
もういちど。
――――――。
「……はあはあ。ちょっ、鳴りゃあしない。やっぱり気のせいだったのかな」
ひとりつぶやいて、マーリウは笛をしまった。
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こちら、「カナンRPG」のプレイをもとにした読み物となります。
おはなしのおおざっぱな筋立てだけ用意して、あとはプレイヤー演じるマーリウが自分の考えで状況に対処していっています。
実際にはこんなおはなし仕立てではなく、もっと散文的な展開なのですが、今回は実験的にこんな書き口で紹介してみました。
途中、マーリウが笛を吹こうとするところは、〈演奏〉技能判定に失敗してしまい、本来なら演奏できるはずの笛を鳴らすことができませんでした。
逆にその前の笛からの合図を感じ取るのは〈知覚〉技能判定に成功して、見事に笛の放つかすかな気配を感じ取れました。
ま、読み進めるにはさして必要のない余談ですが、そんなものだと思っていてもらえればいいかと。
とりあえず次の章に続くと思います。多分。

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