私がこの本「夜と霧」の存在を知ったのは、昨年3月11日、東日本大震災が起こり、
多くの犠牲を出し、日常生活が一瞬にして奪われ、悲しみと苦しみを味わう方々、また、それを自分に置き換え模索する中で、その人々が改めて読み返し、静かなロングセラーとして紹介されていたからである。
作者のヴィクトール・フランクルは、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツにより強制収容所(アウシュビッツ)に送られた体験を、
心理学者として、この世の地獄絵図として、「内側から見た」体験記として、1947年に世に出版しました。
この本に書かれている苦悩は、想像して見ても本当の所は、体験した事がない私には正直分かりません?ただ、この本の中に記載されているP138「あなたが経験したことは、この世のどんな力も奪えない」
私達が、過去の充実した生活の中、豊かな経験の中で実現し、こ頃の宝物としている事は、何も誰も奪えないのだ。そして、私達が経験したことだけでなく、私が為したことも、私達が苦しんだ事も、すべては、いつでも現実の中へと救いあげられている。
。。。私は、戦後生まれである。日本は終戦以後、小競り合いはあったにせよ、平和な時代が続いている。平和は、人間が人間にふさわしい生活を送るための基盤であり、すべての人は、平和の中で生きる生存権を持っているはずである。
その平和を脅かし、争いを生みだす要因となるものには、集団の排他的な心理から生まれる差別や抑圧、富の配分の不公平と貧困、意識の低さなどが考えられる。国内外で起きている事件なども、その一つで、争いを生みエスカレートさせる要因の一つには、異質な者を排除しようとする人間の心理である。
人間が集団を形成すると、そこに「内」と「外」の差別意識が生まれてくる。共通の文化や伝統を持つ仲間の内の集団は、自分達とは異なる文化や伝統を持つ他者を、外の集団として排除することによって、内の集団の同一性を主張し、結束を高めようとする。
他者の集団への差別には、自分達の集団を正当化しようとする心のメカニズムが潜んでいるし、誰の心の中にも存在する、内の集団の優位性を主張するために、外の集団が劣っていると決めつけ、軽視する。
そのため、自分達が持つ悪や弱点などマイナスのイメージを他者に投影し、他者を攻撃することによって、自分達の正しさを主張する「スケープゴート」の心理が働いている。スケープゴートとは「他人の罪を身代わりになって背負う者」とい意味で「聖書」に由来している。
「夜と霧」は、まさしくこのような閉ざされた心がそこまでやれるのか?という差別、そしてその最悪の環境の中でも、寛容な人間がいたという真実が描かれている。
平和な時代を生きる私達こそ、読書の秋、まだ読まれていない方へ、推奨します。 yoshi
P.S.
東日本大震災で避難生活を送って見える方々の生の声の本です。被災者支援センターで無料配布されています。
P.S.
誰もその人の身代りになって、苦しみをとことん苦しむことはできない。この運命を引き当てた、その人自身が、この苦しみを引き受ける事に、二つとない何かを成し遂げる、たった一度の可能性があるのだ。
人間性の最高の価値は、苦悩するところにおいて現れてくる。人間は、人生から問いかけられている。どんなに人生に絶望しようとも、人生があなたに絶望することは決してない。
何かや誰かのために出来る事が、きっとある。 by ヴィクトール・フランクル


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