2017/12/16  17:55

二松学舎大学のレポート 総評と回答  講演会

2017/11/22
二松学舎大学「東アジアの政治と経済II」

金子貴一特別講義
「グローバル化が深化する時代に、
社会人としてどう生きるか〜私的体験から〜」

学生レポートの総評とご質問への回答


○総評:

 まずは、特別講義に出席し、レポートを提出してくれた52名の学生の皆さま、ご清聴本当にありがとうございました。

 私の拙い話をとても楽しんで頂けた事、また、主旨の一つである「海外の諸文化から見ると、同じ事柄でも違って見える。物事を多面的に見てみよう」に、多くの方が気づいてくださった事を、とても嬉しく思っています。

 皆様のレポートには、以下の様な、喜びの声が記載されていました。

・「金子さんのお話はすごく面白くて、楽しかったです」
・「本日は自身のためになる深い講義でした。本当にありがとうございます」
・「金子先生の講義を聞いて、まず思ったのは話が上手い面白い、自分のことを話しているのに、聞き手のことも考えていてすごいと言うことです」
・「中学・高校と不登校の状態で自分のやりたいことを考えて、行動できたのはとてもすごいことだと思いました」
・「海外での生活は非常に夢を見ていた世界なので、非常に興味深い話が聞けてよかった。また、自分はコミュニケーション能力を高めたいと常々思っていたので、非常に参考になった」
・「私は将来海外で働きたいと思っているので、先生の話は凄くためになりました」
・「本日はお忙しい中、ご講演ありがとうございました」
・「凄い面白かったので、また来てほしい」

 こちらこそ、本当にありがとうございました。
 是非、また伺わせて頂きたく存じます。

 さて、レポートを一通り読ませて頂き、「素晴らしい!」と感心する事が何点かありました。

 まず、20分という短時間に手書きで執筆して頂いたにも関わらず、文章がとてもまとまっていたことです。文章能力の高さが見て取れました。

 次に、アイルランド、フィリピンなどの海外で短期留学をしたり、長く中国人のレストランでアルバイトしたりして、実際に外国人との異文化コミュニケーションを行い、将来、海外で働こうと言う意欲がある人が多かった点です。人生に前向きな姿勢と実行力に感心致しました。

 また、二松学舎大学の学生だからでしょうか。儒教や神道を自身自分の核として生きていると言う方が何人かいらっしゃいました。尊い事だと思います。

 一方で、皆様の時代は、私たちの時代に比べて、本当に大変だと思います。あるレポートには、次の様に書かれていました。

「日本語はともかく、英語等もう2ヶ国語も学ばなければいけないとは・・・。英語は中高と6年も学んでいるのに、話せる日本人はおそらく3割もいないでしょう。それに加えてもう一つ言語を学ぶとは、気が遠くなる様な話です。更に、向こうの文化まで知らなくてはならないとは。

 これから、個人に求められるものが大きくなって抱え込めなくなり、ストレスが増え、疲弊した社会になってしまうのでしょうか」。

 しかし、若い皆様であれば、例えハードルはいかに高くても、学生や社会人として精一杯努力され、家族や会社、周りの方々、果ては、国や世界や地球の平和と幸福のために、貢献されていかれますよう願ってやみません。

○ご質問:

日本語と英語、そして、+αの言語というが、具体的にはどの言語を学べば良いのか?

 文化が日本から遠く離れた言語を学ぶのも良いでしょう。それにより、日本文化圏、英語文化圏、+α言語の文化圏の3つの文化圏を繋ぐ三角形が出来て、その面の中で起きることは理解出来る様になります。英語文化圏とは、英語を公用語・準公用語等とする54ヵ国約21億人(人類の28%)の事で、英語を話すだけで世界が格段に広がります。

 または、使用人口の多い言語、今後社会人として仕事で役立ちそうな言語を選ぶのも一案です。中国語(”The World Factbook” 2016年推計 人類の12.2%が使用)、スペイン語(同5.8%)、アラビア語(同3.6%)、ポルトガル語(同2.8%)、ロシア語(同2.3%)などです。ポルトガル語を除いてフランス語を付け加えると、国連公用語(6言語)になります。


外国の文化で、分かりやすい、または、分かりにくいという国はあったか?

 大雑把に言うなら、日本も含まれる「アジア文化圏」や「太平洋文化圏」は感覚的に分かり易く、マスコミやメディア、映画で馴染みの深い、「欧米文化圏」も分かりやすい部類に入ると思います。

 アジア文化圏でも、特に中国や韓国は、歴史的に日本に多大な影響を与え、文化も密接な関係にあります。しかし、文化が近いが故にちょっとした違いに戸惑うことも多いと思います。

 一方で、分かるまでに年月が掛かるのは、アラブや中東を含む「イスラーム文化圏」でしょう。「サブサハラ・アフリカ文化圏」は、情報が少ない為に分かりにくいと思われがちですが、実際は、そうでもありません。

 ところで、日本人が日本の文化を学ぶだけでも一生掛かるのと同様、他国の文化を学ぶのには時間が掛かります。そこで、私は、ある国に初めて入国した日を、その国の人間としての私の誕生日と考えて、その国での経験を積んで、大切に育てる努力をしています。長い年月の間に、私の中には、たくさんの文化圏(国籍)の「私」が育ち、「世界の誰とでも仲良くなれる地球人」になりつつあるのではないかと喜んでいます。


他国の文化を理解するには、具体的に何をすれば良いのか?

 まず、他の文化圏に行った際、目の前で起きること体験することの中で、理解できないこと、カルチャーショックを覚えることを、その時点の自分の価値基準で判断せずに、ただ頭にしまっておくことです。その文化圏での体験を重ね、やがて、法則性が見出せるようになると、以前の自分では理解できなかったことが(または、嫌な体験や相手に否定された体験など)、相手の文化の論理のなかで分かるようになります。相手文化との接触のなかでの「カルチャーショック体験」と「法則性の発見」の積み重ねが、その文化の人々との交流をより深いものにしていきます。

「日本人の生活、習慣等がイスラームの理想に近い」と言う話があった。全く想像が出来ないが、具体的にはどの様な事か?

 主に昭和以前の日本人の価値観であった、礼節を重んじる、約束を守る、言動一致、客人を大切にもてなす、男女が容易に交わらず節度を持って異性に接する、目上の者や年上の者を敬う、仁義を重んじる、敬語や丁寧な言葉使いをするなどです。

公務員を志望しているが、イスラームでは火葬は火獄(地獄)を連想させるので禁忌と言うが、もし、将来職場で、身元不明のイスラーム教徒の遺体を火葬しなければならない様な場面に遭遇したらどうしたら良いか?

 一生、公務員として働いたとしても、その様な体験をする事はないでしょう。しかし、私が申し上げたパキスタン人の違法労働者の例は実話です。

 「行旅病人及行旅死亡人取扱法」(明治三十二年法律第九十三号)には、以下の様に記載されています。

第一条 此ノ法律ニ於テ行旅病人ト称スルハ歩行ニ堪ヘサル行旅中ノ病人ニシテ療養ノ途ヲ有セス且救護者ナキ者ヲ謂ヒ行旅死亡人ト称スルハ行旅中死亡シ引取者ナキ者ヲ謂フ
住所、居所若ハ氏名知レス且引取者ナキ死亡人ハ行旅死亡人ト看做ス

第七条 行旅死亡人アルトキハ其ノ所在地市町村ハ其ノ状況相貌遺留物件其ノ他本人ノ認識ニ必要ナル事項ヲ記録シタル後其ノ死体ノ埋葬又ハ火葬ヲ為スベシ
墓地若ハ火葬場ノ管理者ハ本条ノ埋葬又ハ火葬ヲ拒ムコトヲ得ス

 法律では、無縁仏はそこの市町村が死体を火葬しなければならないと定めます。しかし、明らかにイスラーム教徒であると分かった場合には、上司にイスラーム教徒にとって火葬は禁忌である旨を伝えると良いと思います。

 組織では、後は上司の指示に従うしかありません。上の判断が、例え「法律に従って火葬にすべし」と言われてもです。しかし、火葬にした結果、宗教的問題が起きた場合、その責任は上司や市町村が負わなければなりません。


現代の日本人に「あなたの宗教は?」と問えば、「無神論、無宗教」と答える人が多いと思うが、「日本人は無宗教の民族だ」とバッサリ言い切ってしまうのはいかがなものであろうか。
「日本は無宗教な人が多い特殊な国」と言うが、自分の家の仏教や神道の宗派を忘れているだけではないか?


 おっしゃる通りです。片手落ちの説明ですみません。文化庁『宗教年鑑 平成28年版』によると、平成27年12月31日現在の「我が国の信者数」は188,892,506人です。つまり、同時期の日本人総人口の約1.5倍です。ここで言う信者とは、「各宗教団体が、それぞれ氏子、檀徒、教徒、信者、会員、同志、崇敬者、修道者、道人、同人などと称するものの全てを含んでいます。信者の定義、資格などはそれぞれの宗教団体で定められ、その数え方もおのおの独自の方法がとられています」と記載されています。つまり、一人で複数の宗教団体の信者として所属する(または数えられる)日本人がとても多いと言う事です。

 一方で、2012年12月18日付のロイター電は、次の様な報道をしています。

 「調査機関ピュー・リサーチ・センターが18日発表した世界の宗教動向に関する調査で、キリスト教、イスラム教に続き、「無宗教」の人口が3番目に多いことが分かった。
 
 同機関は調査に当たり、2010年の各国国勢調査や登録人口などの調査資料約2500件を分析。その結果、キリスト教徒が世界人口の31.5%に当たる約22億人と最も多く、世界のあらゆる地域に広く分布していた。2番目に多かったのはイスラム教の約16億人で、全人口の23%だった。

 また、確立された宗教を信仰しない「無宗教」の人口は約11億人で、そのうち6割以上が中国に住んでいることも分かった。日本は人口の半数以上に当たる約7200万人が無宗教で、中国の次に多かった。ただ、無宗教とされる人たちの多くが何らかの精神的な信仰を持っていることも指摘されている」。


人間力を高めるには、どうしたら良いのか?

 世界では、頭と体を向上させる方法は、とても発達していて、果ては、博士課程やオリンピックの特訓まであります。しかし、心を向上させる方法、つまり、人間力を高める方法は、人類の文明誕生以来あまり変わらず、各自に任されているのが現状です。

 様々なハウツー本やセミナー、心理学などで勉強する手もあります。しかし、「人間力」は、知識を得ただけでは向上しません。あくまで、知識を元に、実践を続けて身につけなければならないからです。

 本来なら、宗教や信仰が、心の向上、つまり人間力の向上に寄与すべきだと思います。また、尊敬できる友人、先輩や(将来の)上司がいれば、その方に教えてもらうのも良いでしょう。

 具体的には、例えば、両親、兄弟、先輩、友人などに、自分を客観的に評価してもらい、長所と短所をざっくばらんに言ってもらうと言う方法があります。教えてもらった長所は伸ばし、短所は言われても否定せず、素直に受け入れて、変える努力をするのです。

 自分の部屋など、静かな環境に身を置いて、生まれてこのかたの自分を見つめ直して、悪い事をした記憶が蘇ったら、心の中で相手に「申し訳ございませんでした」と謝っていくのも一つの方法です。そして、自分の悪い心癖を発見して、受け入れ、その上で、「2度としません」と誓って、変えていく努力をしていくのです。

 人間力の向上は、その人その人にあった様々な方法があります。

 是非、皆様の長い人生の中で、人間力を最大限向上させる努力を続け、家族や周りの方々と共に、より幸福な人生を送られる事を、陰ながら応援しています。
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