楽天が通信網を持つ携帯電話会社を作ると発表したことで、既存の携帯会社の株価がかなりの下げとなっていますが、今更通信網を持つ携帯会社を作っても上手くいくのかかなり疑問に感じます。通信網を持つ日本の携帯電話会社は現在3社で、それぞれ固定電話サービスも行っており、どちらかというと固定電話のネットワークを利用して携帯電話を展開しているようなイメージがあります。楽天は携帯電話会社を作るために6000億円ほどの資金を用意し、その内の2000億円で基地局を整備するとかの方針のようですが、全国的に展開するのであれば、日本中にネットワークを張る必要があります。簡単に言えば日本中に光ケーブルを張り巡らすイメージですが、簡単な話ではありません。携帯電話会社の1つであるソフトバンクの場合、まず固定電話会社であった日本高速通信(だったと思うが?)を買収し、その後にボーダホンから携帯電話会社を買収したはずで、日本高速通信の買収額は1兆1千億円ほどだったはずで、携帯電話会社の買収額は2兆4千億円ほどだったと記憶しています。
通信網を整備し、日本中にネットワークを張るためにはこの程度の金額が必要と考え、自社でネットワークを構成するにしてもこの額の半分程度は必要とすると、少なくとも2兆円ほどの金額が必要となり、6000億円の3倍以上となります。また、ソフトバンクが携帯電話会社を買収した頃、ネット掲示板ではソフトバンクの携帯電話は安いけどさっぱり繋がらないという書き込みが多く、1〜2年すると田舎に行くと繋がらないという評判でした。これらに対して孫社長の陣頭指揮の元、毎年1000億円近い金額を投じて基地局などを整備した結果、現在はほとんど問題ない状態となっています。逆に言えば楽天の携帯電話会社もこれと同じような形になる可能性が高く、2019年からサービスを開始するというのは、かなり厳しい感じがします。勿論2019年に全国的にサービスを開始するのではなく、多分、首都圏だけでサービスを開始すると思われますが、首都圏だけでもネットワークを構成するのはかなり厳しい日程と感じます。
携帯電話というのはある意味では設備産業で、一定のサービスを確保するためにはかなりの設備投資が必要です。しかも加入者数と設備投資額が比例するのではなく、サービスの質を確保するために設備投資を行う必要があります。このことは加入者数が多い DOCOMO などには有利な面で、逆に言えば楽天の携帯電話会社というのは、当面は大きな設備投資額が必要な割には加入者数が少ないことから、収入が少ないという赤字体質になります。仮に首都圏だけにネットワークを整備したとしても設備投資額は1兆円規模になりそうだし、加入者数はせいぜい100万人程度とすれば大幅な赤字となり、あっという間に債務超過となりそうな気がします。楽天市場関連の会員は1500万人という話もあり、楽天はこの会員数を自分の携帯電話会社の加入者数として想定しているようですが、現在の携帯電話会社で3位のソフトバンクの加入者数は4000万人弱であり、それと比較しても半分以下です。サービスを維持するための毎年の設備投資額は加入者数にほとんど依存しないことから、設備投資額をソフトバンクの7割程度とみても、利用料金をソフトバンクより大幅に下げるのは無理だろうと見ます。とすると、どう考えても楽天の携帯電話会社というのは無理があると見えますが、どうなんでしょうか。

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