現在、稽古場で仲良くさせてもらっている「枡形城〜」旅僧役の高山社長は、何と自転車に乗っていて気づかなかったらしい(!)。
かく言う私も、幸運にもほとんど影響を受けなかった一人ではないだろうか?
その時、私は地下にいた。
アルバイト先のバッグ屋の地下倉庫で、通販の発送をひとりでやっていた。
相当大きな揺れだと思ったが、気にせずそのまま作業していた。
倉庫なので棚がかなり揺れていたが、バッグなんて軽いので危険はないと思っていた。実際、棚崩れもほとんど起きなかった。
それでもあまりに揺れが長いので、地上にいつでも出れるように階段のところで揺れがおさまるのを待った。入り口が崩れて中に閉じ込められる可能性など露ほども頭を掠めなかった。
しばらくすると社員の人が上から、「速く逃げた方がいいですよ」と声をかけられ、ようやく外に出た。
もう揺れはおさまっていたが、町全体がざわついていた。
二階の美容院は鏡やガラスが割れて大変なことになっていたが、うちの店はほとんど損傷はなかった。
その後は、みんなが落ち着き始めるのを待って仕事の続きにかかった。時々余震が来た時だけ作業を中断して外へ出た。
電話がつながらなくなってパニックになっているようだったが、そもそも私は昨夜稽古場に携帯を忘れてきてもっていなかった。
夕方にはその日の出荷分を全て終わらせた。
すると社員が来て、「もう帰っていいですよ」と言われた。
交通網が麻痺していて町には帰宅難民があふれていたが、自転車通勤の私には関係がなかった(ちなみに妻子は原宿で地下鉄を降りたところで、震災に遭い二時間かけて歩いて帰ってきたらしい)。
つまり、私はアルバイトの作業が数十分中断した以外、いつも通りの一日だったのである。
家に帰ると、両親も妻子も無事だった。
以上のような呑気な状況だったので、ここまで大変な事態になっているとは予想もつかなかった。東北には何人か友人が住んでいるので、安否が気にかかる。

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