ここにきて国際情勢が急激にキナ臭くなってきた。金正日は極秘に訪中したまま中国当局に匿われて動向不明。イランのアフマディネジャド大統領はウラン濃縮活動を再開を宣言。今までイランを庇い続けてきた仏独はカンカンに怒っていて国連安保理委託の可能性が高まっている。
ハリケーン対策で支持率を落としイラク復興でも出口が見い出せないブッシュ政権の低迷を睨んで、仮想敵国とされた二国は今のうちに「ハッタリかましたれ!」と挑発行為に出ているのかもしれない。特にイランは前ハタミ政権のころと比べてもアフマディネジャド政権の保守化、原理主義化が国際社会で懸念されている。
イランは死ぬまでに一度は行ってみたい国だった。なぜなら偉大な映画監督アッバス・キアロスタミを生んだ国だからだ。
「友達のうちはどこ?」を観て、どうしようもなくイランの庶民に魅せられた(キアロスタミ監督は非職業俳優を使うことで有名)。続編の体勢をとっている「オリーブの林をぬけて」も素晴らしかった。
そして、「桜桃の味」は生きることの絶望と希望を描いた映画史上に永遠に残るであろう大傑作だ。自殺志願者が自分が死んだ後、墓穴に土をかけてくれる人を延々と探すというただそれだけのストーリー。しかし、自殺を決意しながら様々な人と会話を交わしながらどこかで生きる希望を見出そうとしている主人公の矛盾。本当にシンプルだが深い映画だ。
こんな素晴らしい作家を育てた国に是非一度行ってみたいと思っていた。
アメリカのハリウッド映画が物量や技術面でいくら圧倒しようと、ここまで深く生と死を見つめた作品は創れまい。
人の心、文化は弱肉強食の国際政治のようにはいかない。私はそう信じている。



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