最近、青春時代に観て印象に残っている映画を観直してみることが多い。
「蜘蛛女のキッス」という監獄を舞台にゲイと革命家の恋愛を描いた名作を改めて観て、主演のウィリアム・ハートの役者としての技術の高さに圧倒された。
そしてその直後、偶然にも深夜の海外ドラマで近年のウィリアム・ハートを観た。「スティーブン・キング8つの悪夢」というオムニバスの「バトルグラウンド」という話だった。
ウィリアム・ハート扮するオモチャ・マニアの殺し屋(この設定からしてアホである)の家に、TAMIYA1/32模型のような兵士と戦車、戦闘機などのフィギュア・セットが贈られてくる。仕事でそのオモチャ・メーカーの重役を殺していたハートは初め、プラスチック爆弾のようなものかと警戒するが、この贈り物はそんな生易しいものではなかった。
何とこのフィギュアの兵士達はハートが目を離した隙にムクムクと動き出し、ハートに対し戦争を仕掛けてきた。
このオモチャの兵隊師団に対し、大真面目で応戦する殺し屋ハートがメチャメチャ素敵だった。ストーリーがあまりに馬鹿馬鹿しく、だからこそ最高に面白いのだが、それを洒落でなく本気(マジ)で体当たりするこのベテラン名優の心意気が実に美しく、気持ちがいい。名作「蜘蛛女のキッス」もお馬鹿な「バトルグラウンド」も、手加減なしの100%で演じ切るあっぱれさ。それでも衰えない技術力の高さ。
俳優の鏡である。
「バトルグラウンド」…ハートのお陰で一見の価値ある秘かな名作である。

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