震災以来、中断していた「枡形城〜」を百倍楽しむための鎌倉時代基礎知識コーナーを書いてみよう。
鎌倉時代関連の本を読んでいて、まずぶち当たる難問がこれだ。
「鎌倉幕府はというものは存在しない」
大抵の本にはこのことが書いてある。
とは言っても、源頼朝が鎌倉を本拠地として敷いた東国武士の政権機構は存在している。
どういうことかというと、こういうことなのである。
「当時は、武家政権そのものを幕府とは呼んでいなかった」
「幕府」とは戦陣で大将のいる参謀本部を囲っていた幕(時代劇などでお馴染みですね)から来ていて、それが転じて将軍の住む館を指す言葉だったのである。今で言うと「首相官邸」の建物自体のことで、そのことを「政府」とは呼ばない。
鎌倉の武家政権のことを「鎌倉幕府」と呼ぶようになったのは、江戸時代も後半のことなのである。要は「江戸幕府」が自らのルーツとして鎌倉政権を取り込みたいという思惑があってこう呼ぶようになったのだろう。
このことを知ってから私は台詞の中に「幕府」という呼称が出てくると違和感を抱くようになってしまった。もちろん今回のお芝居の中にも沢山でてくる。「幕府が乗っ取られてしまうぞ!」という台詞も館が乗っ取られる程度に思えてあまり大事に感じられない。
しかし、この事実を書いている歴史書は大抵「〜しかし、混乱を避けるためここでは幕府とは武家政権そのものを指す言葉として使用する」と断っている。
「幕府」に代わる便利な単語が、今のところないというのが現状のようである。
書物ですらそうなのだから、より解りやすさが求められる演劇においてはいわんやおやである。だから、今回のお芝居でも私は便宜上、現時政権そのものを幕府と呼ぼう。
そこのところ、ちょっと頭の隅に入れておいてくれると、より深い理解につながるかもしれないね。

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