南海トラフ
南海トラフは四国や紀伊半島、東海の沖合いに横たわる海溝で、そこではフィリピン海プレートが沈み込んでいます(年間3〜4センチぐらいの速度)。海溝といっても水深は比較的浅く、最大4800mぐらいで、東に行くにしたがって浅くなる傾向があり、反射人工地震波探査の結果、そこには1000m以上の堆積層が存在して、それがプレートの運動によって陸側に押し付けられて、褶曲と断層によって変形しながらもり上がって斜面をつくっていることが分かりました。このようにしてできた地殻が付加体なのですが、この実態を調べるのに国際深海掘削計画のもと、深海掘削船を用いて室戸岬沖合い150km、水深4700mの海底を1300mの深さまでボーリングして地層のサンプルを採集したそうです。
その結果、南海トラフの堆積層の下部層は泥岩で、その上に500m以上の厚さにわたって砂泥互層よりなる上部層が堆積していることが判明しました。その上部層の砂の鉱物を鑑定してみると、そこに含まれる火山岩片が鍵になって、富士川を中心とする駿河湾沿岸域から乱泥流によって供給されたものであることがわかったのです。静岡県の富士川河口から四国沖まで約700kmあります。東海地震など、周期的に起こる大地震によって地すべり崩壊を起こし、乱泥流となって四国沖まで流れるという図式が描かれたのです。このような堆積物をタービダイトとよばれています。いずれにしても、伊豆・小笠原火山列島の衝突が南海トラフに多量の土砂をもたらした原因であると考えられています。
さきの反射式人工地震波断面の分析解釈によると、南海トラフの付加体中で、海底下300メートルほどの地下に海底面とほぼ平行で、「ボトムシムレーティング反射面」と呼ばれる特徴的な反射面が存在します。これは、間隙水中のメタンが水和(メタンガスハイドレート)して、海底下の温度と圧力で濃集し氷状の水分子に閉じ込められている層となっている部分(上部)と溶けている部分(下部)との境界面を示しているそうです。
このことは、付加体で脱水が行われ、地層が固結してゆくことを示す証拠となっています。
南海トラフは、予想される南海、東南海、東海などの地震によって注目されていますが、以上のように新たな陸地、付加体が形成されていることがわかってきました。

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