琥珀
世界の琥珀の産地として、バルト海沿岸地方、ドミニカ共和国、メキシコ、中国の撫順、それに日本の岩手県久慈地方が有名です。琥珀そのものは、松脂などの樹脂の化石ですが、その中に閉じ込められた生き物も化石なのです。今後、虫入り琥珀の研究が進めば、生物の進化をDNAレベルで解明されていく可能性があります。実際、琥珀のなかの昆虫化石からはDNAが検出され、約1億2千万年前で現在最古のDNAも検出されています.
撫順戦犯管理所の庭にある売店の人が「ムシ、ムシ」と言いながら虫の入った琥珀をすすめにきます。『ジュラシック・パーク』が公開されて以降、虫入り琥珀の人気が一気に高まると、マニアはより珍しい生き物を封じ込めた琥珀を争って買い求めるようになってきました。そこで、琥珀の産地では、完全に化石化していない樹脂を溶かしてその中にヤモリなどの死骸を埋め込んだ偽物がさかんに作られるようになったそうです。
琥珀は,原石から加工したものと、粒が小さく製品にはできない原石を集めて溶かし再生した品があります。琥珀は、150度で軟化して、250℃〜300℃で完全に溶解する性質から再生品も多く出回っているそうです。
岩手県の久慈地方で産出する琥珀は、中生代白亜紀後期の約8500万年〜約9000万年前に属するもので、世界的にも古い時代の琥珀です.岩手県と言えば、宮沢賢治,幼少の頃から大の石好きで、盛岡高等農林学校時代、鉱物学を専門にし、宝石や鉱物のさまざまな知識を学んだこともあり、一時期本気で宝石商を自分の職業にしようと思っていたそうです。そして、岩手県等で取れる原石を利用することを考えていたといわれ、もちろん琥珀の原石も含まれています。
いうまでもなく賢治は文学者でもあり,童話など多くの作品のこの世に残しました。彼の残した作品の中には、30数ヶ所の「琥珀」の文字が登場しているそうです。琥珀をこよなく愛した賢治らしさがにじみでています.そういえば、夜明けの空の「・・・琥珀色にかがやき・・・」という表現を何度か目にしたような気がします。
宮沢賢治は教師時代、「土壌」について、地球の誕生岩石の生成、動植物の生死にさかのぼり教えたそうです。細切れでない壮大な自然のドラマが、生徒の心をうったといわれています。

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