コスタリカの石ころ(2)
先日、築映で「華氏911」を見ました。その中で気になるところがありました。それは、アメリカのイラク攻撃に対する支持国に「コスタリカ」や「アフガニスタン」があると、ブッシュ大統領が得意げに語っているのですが、「コスタリカは軍隊の無い国だし、アフガニスタンは確かアメリカ兵がいたわな。」と揶揄する場面がありました。
私は一瞬、耳を疑いました。何かの間違いではないかと。コスタリカは、軍隊を捨てた国だし、資金を援助できる豊かな国でもありません。中米紛争の83年には、非武装中立宣言で、米国の圧力をうまくかわし、その後は中米和平のまとめ役になって、火消しの役割をはたしてきました。しかも、その功績で、87年には、当時のアリアス大統領がノーベル平和賞に輝いているのです。コスタリカの歴史を振り返ってみても、平和主義の国です。アメリカの武力攻撃に対して賛成するはずがないと思うのです。
映画を見終わった後も、「何でや」とそのことが気がかりでなりませんでした。
その数日後、ある新聞に目を通していると、『イラク戦争支持を撤回したコスタリカの民主主義』という見出しが飛び込んできました。要するにコスタリカの最高裁憲法法廷が政府の行為に違憲判決を出して、イラク戦争の米支持が撤回されたというのです。
コスタリカ大学で法律を学ぶ一学生、ロベルト・サモラさん(23歳)の、平和を求める憲法の精神に、これはおかしいの疑問から始まったといわれています。学友や弁護士協会、労働組合などが連動して、サモラさんの一声が波紋のように広がったと言われています。裁判官七人の全員一致で、判決は即時発効し過去にさかのぼって適用され、これで米国を支持した事実は、無かったことになったそうです。
サモラさんの「コスタリカは戦争の国ではなく、平和の国だ。それは祖父母が私に語ってくれたことだし、次の世代にも残してやりたい」という言葉も紹介されています。平和を願う世論が底流にあるコスタリカの民主主義が健在であるということを見せつけてくれたのです。 わたしの心のもやもやが晴れました。
中米のこの小さな国が、世界で輝く宝石のように思えてなりません。

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