万峰林とドリーネ
貴州省で万峰林(まんぽうりん)というすばらしい世界(風景)を見ることができました。文字通り、山々の峰が水墨画のようにもっこりもっこりと重なりながらたくさん連なっているのです。私はまだ桂林に行ったことがないのですが、テレビでその風景を見てすばらしさを覚えています。桂林は石灰岩の山々を大河がゆったりと縫うように流れていますが、ここ万峰林は、やはり石灰岩で出来た山々と村と田園との調和が美しい見事な風景なのです。
田畑は稲を中心に植えられているようで一面青々していました。一枚一枚の田畑は小さくて畦で区切られていました。その中で、何箇所かでぽつんぽつんとすり鉢のようにへこんでいるところがありました。その部分の田畑は馬蹄形になっています。中心は井戸のようになっているそうです。いったいこれはどういう現象なのでしょうか。
実は、ドリーネといって、石灰岩の割れ目に沿って雨水などがしみこんで、その入り口を溶かし広げて窪地になったものです。上から見ると円形や楕円形に見えます。横から見ると皿や井戸、バケツ型などがあるそうですが、ロート型が一番多いようです。
ドリーネのある万峰林
万峰林の写真は、稲も黄色く実り収穫の秋を迎えたころのものです。私は、かつて駅に並べらている旅行案内のパンフレットの表紙を飾る、菜の花で囲まれた山々の写真を見て「こんなに美しい世界があるのだろうか」と強く心に印象付けられたことを覚えています。たしか雲南省への旅の案内だったと記憶しているが、貴州省のこの風景によく似ています。
春の菜の花に埋まった万峰林を想像するとたまらなくなります。
私たちの生活のように、物にあふれた便利な生活でないかもしれません。しかし、こんなにのどかで静かな暮らしがあるなんて夢にも思いませんでした。たしか農業も有機農法を取っていると聞きました。
ここに暮らしている民族は、布依族(ぷい族)だそうです。
観覧車(電気自動車)で三十分ほどかけて見学するコースがあります。一部村の中を通りますが、コンクリートの柱と柱の間を石灰岩の石を詰めて壁を作り、家を建設しているところがありました。まさに石灰岩の家です。
中国政府が発行している民族衣装の切手・布依族
ドリーネは、日本のカルスト台地のあるところではよく見られます。たとえば、秋吉台では約5000ものドリーネがあるそうです。また、秋吉台上のドリーネをつかって耕作し、そばの種まきから始まって収穫祭まで取り組むという催しもあるようです。
桂林や、昆明の近くにある石林、そしてこの万峰林などのカルスト台地に出来た見事な景観は、巨大な石灰岩の台地が生まれたあと、雨水などにより溶解し柔らかい部分から浸食されてできたものと考えられています。先日、NHKテレビの「探検ロマン世界遺産」という番組で、マダガスカル島の西部に位置するツィンギ・デ・ベマラハ自然保護区の針のようにとがった石灰岩の巨大な塔が林立する景観が広がっていたのを見ました。まるで地獄の針の山という表現をしたくなるような様子です。
むき出しの石灰岩の山は、自然の厳しさを感じさせ、木々に覆われたものは癒しを与えてくれるようです

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