2008/5/29

<一>
薔薇ノ木ニ
薔薇ノ花咲ク
ナニゴトノ不思議ナケレド
<二>
薔薇ノ花
ナニゴトノ不思議ナケレド
照リ極マレバ木ヨリコボルル
光リコボルル
(北原白秋「薔薇 二曲」)
贈るにしろ貰うにしろ、
バラという植物にまったく縁のない人生だけど、
ある年の冬、思いがけず、バラの鉢を譲り受けた。
プレゼントとかいう洒落たものではない。
それは、
葉もない15センチほどの棒が2本突っ立っている
素焼きのそっけない茶色い鉢。
冬の間はなんの世話も要らない、と聞いていたので、
雪の降るベランダに放置した。
春になって、その細い棒の先に蕾が出来、
鉢の直径はあろうかという花がボンと咲いて驚いた。
上記の詩を思い出す。
‘ナニゴトノ不思議ナケレド’だ。
その後の引越しで、そのバラは枯らしてしまったのだが、
どういう理由だったか、新たなバラを買ってきた。
ベランダの隅に置き、乾いたら水をやった。
しかし、このバラは花が咲く様子がない。
理由も分からぬまま月日が過ぎたが、
ある日、テレビの園芸番組を見ていて気が付いた。
僕の世話が間違っている。
最初のバラは木立性で、冬に枝を剪定するタイプ。
それを覚えていたので、
新入りもばっさりと剪定していたのだが、
ヤツはつる性のバラで、むやみと枝を切ってはいけないらしい。
枝を横方向に伸ばしてやるといい、と知り
剪定をやめ、伸びたつるを
エアコンの室外機の枠に横向きに沿わせて固定する。
次の春は咲くかしらん。
はたして次の春、バラは大きな蕾をつけた。
毎日見るたびに蕾は膨らみ、やがて花が開いた。
ハジメマシテ。
折りたたまれた全ての花びらを広げ、
花は自分の重さで下を向く。
数日もすると、
花びらの端はめくれて乾き、濃く変色した。
ピークを過ぎたらしい。
もうすぐ散るんだな、と思う。
夕暮れのベランダの一隅はぼんやり明るかった。
ヤツが発光してるみたいだ。
照リ極マレバ木ヨリコボルル
光リコボルル
‘光リコボルル’。
今年もベランダのバラが咲きました。

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