無事、アメリカンブレックファーストも終わり、いよいよ、タクシーで海軍基地に向かう。
途中見たノーフォークの街並みは、長閑で平和そのもの。聞けば、教育機関が発達しており、それに力を注いでいるかなりないい街だとか。
そうだったのか、と納得しながら穏やかな緑と、ぽつりぽつりと建っている平屋建ての民家を見る。
やがてタクシーは、独特の閉鎖性を見せる基地に着いたが、ゲートを難なく突破。見学を大らかに受け入れているらしい様子に、ちょっと驚く。それを裏付けるかのように、「ツアーハウス」なるものの前で停車した車から降りると、中はこぎれいな土産物屋といった風情だった。
もちろん、商品は海軍にちなんだものばかり。
壁には、たくさんの写真が展示してあって飽きさせない。
私と妹の「土産物好き」の虫が、早くもそこに居着きそうになった。
周りにもたくさんの、家族連れが訪れており、夏休みのせいか、子供達の数も多い。
気がつくと、なにやら兵士を囲んで説明が行われており、私も一応その輪に加わった。だが、一対一でもともすれば塞がれがちな耳たぶが、きれいに餃子の皮みたいに顔にくっついて、なにも聞こうとしない。
みんながなにやら納得したような顔で立ち去っていくと、私は兵士(曹兵)に聞いた。
「どこへ行ったらいいの?」
彼は、丁寧に「ここにヘリコプター、ここに飛行機」と、地図のコピーを渡してくれた。
かわいい曹兵に手を振って、私たちは意気揚々と外へ出た。
「バス、出るよ」
と、いわれて慌ててバスに乗る。ずらっと居並ぶツアー客たち。バスガイドは、さっきとは段違いのいかにもたたき上げ風の、曹兵のおじさん。靴はぴかぴか、夏の白い制服はぴしりとアイロンがかかっている。
彼はアンチョコ片手に、延々しゃべっている。
ああ、また耳がふうっとかぶってギョーザに……。
仕方なく、ひたすら窓の外をビデオで撮る。
たくさんのビル。ひとつの街みたいに、広い広い道路が走り、バスはどんどん過ぎていく。
たくさん、たくさん聞きたかったこと、あったんだけどなあ。
ひとっつも、ひとっことも口など開けやしない。
心の中で、帰ったら英会話だけではなく、子供と一緒に公文をしよう、と心に誓う。聞き取るのにはだいぶ慣れても、自分で文章組み立てができないことに、いらいらするんだもん。
まあ、そういうことはともかく、大好きなヘリコプターの展示場所までやってきた。一番好きな、シコルスキー型だ。やった、と叫ぶ。
実際に使っている物らしく、内部は雑然としている。
操縦席まで乗せてもらい、丹念に写真撮影をする。いちおう、資料のために来たんだもんね。
ジェット機よりも、ヘリが好きだ。どうせなら、飛んでくれないかなあ、などと厚かましいことを夢想する。
後ろは操縦席に比べたら広い。
怪我人を運んだりする担架なども、乗せてある。操縦席にはパイロットが案内で乗り込んで説明してくれてたけど、すごく大柄で、よくこんな缶詰みたいな場所にいられるもんだと感心する。昨日のタクシーより、さらに狭いような気もするほどだ。
大変なのね、兵士の人も。
いたけりゃ残っててもいいが、乗りたかったら乗りなさい、といういい加減なバスに乗り込んで、ぐるっと見せ場を回ってくれるバスはありがたいもんだ。
このまま帰っていれば、大人しく観光も終わろうというものである。
けど、私たちお気楽トリオが、こんな与えられた乗り物で一回りするだけで終わるわけがない。
そんなつもりはなくても、ただでは終わらないのが、私たちなのだ。

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