この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。
世界はきみを入れる容器ではない。
世界ときみは、2本の木が並んで立つように、
どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。
きみは自分のそばに世界という立派な木が
あることを知っている。それを喜んでいる。
世界の方はあまりきみのことを考えていないかもしれない。
でも、外に立つ世界とは別に、きみの中にも、
一つの世界がある。
きみは内部の広大な薄明の世界を創造してみることができる。
きみの意識は二つの世界の境界の上にいる。
大事なのは、山脈や人や、染色工場や、セミ時雨などから
なる外の世界と、きみの中にある広い世界との間に
連絡をつけること、一歩の距離をおいて
並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。
たとえば、星を見るとかして。
二つの世界の呼応と調和がうまくいっていると、
毎日を過ごすのはずっと楽になる。
心の力をよけいなことに使う必要がなくなる。
水の味がわかり、人を怒らせることが少なくなる。
星を正しく見るのは難しいが、上手になれば
それだけの効果が上がるだろう。
星ではなく、せせらぎや、セミ時雨でもいいのだけれども。
[スティル・ライフ]池沢 夏樹
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