2009/9/22  8:41

湯浅芳子  文学

湯浅芳子という女性のことを知った最初は、小熊秀雄の年譜に数回その名が記されていることからだった。

創樹社版小熊全集の年譜によると、二人が出会った最初は、大正13年(1924年)。小熊が上京し湯浅が編集者として勤めていた「愛国婦人」に童話「焼かれた魚」を持ち込み、湯浅の判断によりこの童話がが掲載されたことに始まる。翌大正14年(1925年)には、再度上京した小熊が、湯浅と中條百合子(宮本百合子)が二人で住んでいた高田老松町を訪ねて二人と懇意となる。その後、湯浅と宮本はロシアへ旅立ち、続いて小熊は上京、様々な経緯を経て湯浅と小熊は友情を保つ。さらに昭和14年に湯浅が口訳し小熊が即興で詩に仕立てたプーシキン訳が完成した。

湯浅芳子は、1896年(明治29年)、京都生まれ。上京して「愛国婦人」の編集に従事しながらロシア語を学ぶ。野上弥生子の紹介で、作家中条百合子と出会い、1924年から(大正13年)から百合子と共同生活を送り、1927年から1930年にかけて二人でソビエトで生活した。帰国後、宮本百合子は湯浅とは別れ宮本顕治と再婚、湯浅とは縁を切る。
湯浅は、その後、ロシア・ソビエト文学の翻訳に打ち込み、現在まで読み継がれる名訳を残している。

私は、この数年、湯浅のことを徹底的に調べようと思った。
主なものは、次のようなものだった。
瀬戸内晴美「孤高の人」、沢部仁美「百合子.ダスビダーニャ-湯浅芳子の青春」、湯浅芳子「百合子の手紙」、宮本百合子「二つの庭」「伸子」「道標」、湯浅芳子の翻訳チエーホフ「妻への手紙」「退屈な話」「ゴーリキー全集」ツルゲーネフ「処女地」シチェードリン「ゴロヴリヨフ家の人々」
浮かび上がるのは、明治の女性としては珍しいほどの強い個性、人への愛着だった。特に彼女自身の二つのエッセイ「いっぴき狼」「狼いまだ老いず」にそれがよく表れている。

それにしても、湯浅芳子の中条百合子、後の宮本百合子という同性への愛憎の深さにはつくづく驚かされた。そして、革命後のソビエトへ二人だけで行き3年を共に暮らす大胆さ・・。

湯浅芳子に詩人小熊秀雄を回想した文章がある。

一つは、昭和15年11月に小熊が亡くなった直後に出た「現代文学追悼号」に掲載された

「小熊さん」

という文章である。この「現代文学追悼号」には、小熊の近くにいた友人たちの友情に溢れる文章がいくつも掲載されているが、女性はただ一人湯浅芳子だけであり、しかもその文章は男と女を越えた深い友情と哀惜に満ちたものだった。

「その死にあってもう一度会いたかったのにと思うひとはそう滅多にはいないものだ。
小熊さん
ああ、私はもう一度あなたに会いたかった。
   
    半生は満足するほど負けたから
    残りの半生を満腹するほど勝ちたい

と歌うあなたに、せめてもう十年生きていて貰いたかった」

詩人は、残された詩だけを読んでいればいいのだろう。しかし、日本の知性を代表するといってもいい湯浅芳子という女性にここまで書かせた詩人と徹底してかかわっていこうと私に思わせたのは湯浅芳子である。


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2013/8/22  14:52

投稿者:玄柊

石塚さん、コメントありがとうございます。この件については、私は詩雑誌「コールサック」71号に『邂逅する人々―小熊秀雄と二人の女流文学者』として書きました。今後も違った形で、まとめて本にする予定です。
コメントが遅れまして失礼いたしました。

2013/4/6  8:52

投稿者:根保孝栄・石塚邦男

湯浅芳子・・宮本百合子との関係興味深い・・。

これはいい小説の材料です。

2012/7/26  18:43

投稿者:玄柊

山崎さん、コメント頂きありがとうございます。長く更新していないブログですが、高山さんより情報は頂いています。今後、小熊及び湯浅関連の情報をこのブログで継続して書いていこうと思います。
私は昨年、渋谷で「百合子・ダスビダーニャ」を拝見しました。なお、玉井さんとお付き合いがあるとか、偶然ですが面白いですね。今後もよろしくお願いします。

2012/7/26  11:58

投稿者:山核ウ

初めまして。映画『百合子、ダスヴィダーニヤ』(浜野佐知監督作品)の脚本を担当したヤマザキといいます。7月28日から1週間、札幌のシアターキノでこの作品が上映されるにあたり、フェイスブックの『百合ダス・ページ』で、こちらのブログをリンクさせて頂きました。
実は、映画のパンフにもご寄稿頂いた高山敦子さんのツイートを紹介した際に、たまたま検索して、こちらの記事を拝読し、湯浅芳子と小熊秀雄の関わりについて深く理解された内容と文章に感銘を受け、併せてご紹介させて頂いた次第です。事後承諾となって申し訳ありません。
なお、高山さんによれば元創樹社の玉井五一編集長ともご懇意とか。玉井さんには同じく浜野監督作品『第七官界彷徨ー尾崎翠を探して』以来、お付き合いさせて頂いています。
これからもよろしくお願いします。
◉フェイスブック・百合ダスページ
https://www.facebook.com/pages/%E7%99%BE%E5%90%88%E5%AD%90%E3%83%80%E3%82%B9%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%A4/294153863944362

2010/7/17  11:43

投稿者:玄柊

Bruxellesさん、リンクありがとうございます。そちらのブログも拝見致しました。よろしくお願いします。

http://northland-art-studio.web.infoseek.co.jp

2010/5/18  17:53

投稿者:Bruxelles

はじめまして
湯浅芳子に関する情報として私の記事にリンクさせていただきました。
URLにトラックバックしています。どうぞよろしく。

http://goodlucktimes.blog50.fc2.com/blog-entry-222.html

2009/9/22  15:42

投稿者:玄柊

個性が強いので、湯浅芳子に対しては好き嫌いがあると思いますが、小熊を非常に評価していたのは間違いない事実でした。
翻訳者であったために、宮本百合子に比べるとその名は知られていませんが、日本文学史上大きな存在であることは間違いありません。

http://northland-art-studio.web.infoseek.co.jp

2009/9/22  10:40

投稿者:モネ

ロシア文学者としての湯浅芳子は知りませんでした。
宮本百合子、瀬戸内寂聴と親交があった方だったのですね。
そして小熊秀雄の才能を深く理解していた。
彼女の追悼文は心を打ちます。
「孤高の人」を読んでみたくなりました。

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