春になると何かしたくなりますがね。
その為にはアレですよ、生活習慣のリズムが前提になってくるわけですよ。
今日楽器屋に行って、ギターのペグ交換が出来るかどうか聞いたら、Gibsonのペグはちょっと厄介らしい。
俺のギターのペグの型は、純正品では全く同じものが無く、Gibsonのロゴが付かなくなってしまうんだとか。まあ、それでも構わないので交換してもらう事にしたのだけど(大分来てますね…とか言われたらね)、16000円程度かかるそうだ。
次回以降もう少しちゃんとメンテナンスしよう。そうしよう。
さあ、タイトル通り無推敲でいきましょう。
緩勾配の風景K
正志は、佳之と大学の近くにある喫茶店にいた。夏期休暇が終わり、学生達に再び長い半年が訪れた。鬱陶しい残暑がまだ続いている。他愛ない会話が、今日の正志には面白くない。事あるごとに、小夜の傷まみれの背中が頭を過ぎった。
小夜は何も語らなかった。しかし、その痛々しい痣や切り傷が父親の虐待によるものだと言うことは、その日正志が図らずも聞いた怒声と物音から明らかだった。言葉無くうなだれた小夜に対して、正志はそれ以上何も聞くことが出来なかった。
(何を伝えようとしたんだ)
この考えが正志の中を渦巻いていた。はっきりと意識こそしなかったが、小夜が何も語らず差し出した素肌の背中は、日が暮れた空の仄かな空気を纏って、息を呑むほど美しかった。生々しい傷痕のひとつひとつは、確かに妖しい魅力を正志に焼き付けたのである。
「何やらお悩みかしら?」
おどけたような佳之の声が聞こえたので、正志ははっとしてその目を見た。
「なるほど。何があった? 言えない事か?」
「いや、たいした事じゃないんだよ。平気平気」
「そうか。で、何があった?」
「まあいいんだ」
「うんうん。で、何があった?」
気の抜けた押し問答に、正志は少し苛立ちを覚えた。佳之はそれを悟り、
「すまんすまん、冗談だよ。まああれだ、あんまり溜め込みなさんな。喋るとストレス解消になるぞ。ただ、受け手には負担をかける事を忘れずに。困ったら、この俺がお助けしよう!」と付け加えた。
正志は、この佳之の根拠の無い明るさに少し元気付けられた。
「まあ、その時は頼むよ」
そして、佳之に負けず劣らずおどけた調子で聞いた。
「それなら、カウンセラー志望の佳之さん。虐待を受けてる人にはどう対処する?」
「そりゃ人それぞれだろうな。よく分からんけど、家族に問題がある場合、本人の心身の傷だけ考えりゃ良いってもんじゃないからさ。上手く専門家に托す様な流れを家庭の中から作るのがベストじゃないか? 暴力を振るう側に第三者が干渉したり、無理に引きはがそうとしたりするのはアウトだろうな」
佳之の思いがけない真面目な返答に、正志は感心した。
「なるほどね。なら、例えば女友達が親父に虐待されてるって分かったらどうする?」
佳之は正志の目が思いの外真面目なのに気付いたが、自分の考えをあまり真に受けられるのを嫌った。
「まあ、アレだな、よき親父になってやる事かな」
エアコンが、急に肌寒くなった。


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