昼以降に起きるのは未だに罪悪感に満ちておる……
しっかしまあ、携帯で打った文章ってやっぱりまとまってないもんだね。ある程度までは修正したつもりだけど、駄目なもんは駄目だ。長い文章を書くなら全体の見通しが良い形でないと。
緩勾配の風景N
「美沙子が浮気をしているかもしれない」
克義がそれまでついぞ味わった事の無かったような苦悶は、この一言から始まった。彼がそんな疑念を持つことは今までに一度もなかった事である。しかし、ある時を境に美沙子の様子は目に見えて変わっていった。口数が減り、一人で物思いに耽る事が多くなった。彼は何も言わなかったものの、誰よりも早くそれに気付いていた。唯一人、小夜を除いて。
克義の疑念は次第に非難へと変わっていった。心の中で、彼は美沙子を責めた。数日が経過し、美沙子はいよいよ様子がおかしくなっていた。急に化粧に気を使い出し、しばしば克義に媚びるような仕種を見せた。克義は、肚の底に沸き上がる猜疑心と嫉妬心を拭い去る事が出来なかった。しかし、彼は一方で燃え上がるような胸の高鳴りを感じていた。
「何か良いことでもあったのか」
と何気なく聞いても、美沙子は
「ううん、何もないよ。どうして?」
と答えるばかりだった。その答えが返ってくる度に嘘だという確信を強めながらも、それ以上問い詰める気にはなれなかった。
それから2週間が経った。克義が早めに家に帰ると、玄関に男性の靴が揃えてあるのが目に入った。これまで目を背けてきたものを突き付けられた気がして、言い知れぬ怒りと不安がこみ上げてきた。居間に入ると、思いがけずかつての級友、充の姿があった。
「あっ、お帰りなさい」
「克義、お邪魔してるよ」
普段の克義ならば、この来訪者に喜びを隠せない所だっただろう。しかし、長い間堪え難い苦悩に苛まれてきた彼の心は、即座にひとつの解答に向かった。
「お前だったか」
そう一言だけ呟くと、克義は表情ひとつ変えることなく充に殴り掛かった。美沙子の心変わり、そして突然の来訪者がかつての2人を取り持った存在であった事。この2つの事実は、自然に彼の行動を決定した。感情の爆発である。不意を突かれた充は、呆気なくノックアウトされた。克義は美沙子の視線を無視し、自室に飛び込んだ。発作的に全身を猛烈な悲しみが襲い、ただ肩を震わせて泣いた。不意に、心の糸が切れてしまったようだった。
翌朝、太陽の光で目覚めると、我が家は妙に静かだった。普段なら聞こえてくるであろう、朝食の支度に歩き回る美沙子の足音がなかった。おもむろに階下に降りると、充は既にいなくなっていた。美沙子は相変わらずそこにいた。表情はどこか虚ろで、顔は蒼白だった。この時の彼女の表情は、生涯彼の脳裏に焼き付いて離れなかった。この翌月、美沙子は睡眠薬を服用して自殺した。


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