2007/3/21
春に向けて季節がその歩みを少し躊躇しているような休日の午前。金井美恵子の『噂の娘』でも劇中作としてアレンジされ、作品内に取り込まれていたバーネットの『秘密の花園』を再び読み終えたところです。
きっかけは押入れの整理でした。押入れの中から紐で結わえられた子供時代の児童文学の絵本全集がでてきました。だいぶん以前に実家から引き取り、そのまま押入れの中で眠っていたものです。少し懐かしい気持ちになり、紐を解いて、しばらくの時間、巻の内容を確認したり、眺めたり、いくつか箱から取り出して頁をめくったりしていました。そのなかに『秘密の花園』がありました。
そのシリーズの正式名称は、世界文化社の『少年少女 世界の名作』といいます。
A4より少し背の低いハードカバー版で箱入り、厚手のコーティングされたアート紙80頁程度の厚みで、手荒な子供の扱いにも耐えるようつくりがしっかりしていて(現に長い年月を経ても落丁等はありません)、子供が持って読むのに重過ぎず軽すぎずといった丁寧な造本です。
そのなかの19巻目が『秘密の花園』です。昭和45年4月20日の発行で定価はなんと480円です。このシリーズは、わたしがまだ小学生に入ったか入らないかの頃に親が定期購読という形で申し込んで、それが毎月届けられたのでした。そのころ家族は辺鄙な田舎住まいでしたが、そんなところにも書籍の営業マンが時々やってきて、こういった世界名作全集や百科事典などのシリーズ物をセールスしていくのでした。庭先で販売員が置いていったこのシリーズの見本を両親が手に取り、購読するかするまいか相談していたのを覚えています。多分、わたしも強く希望したのでしょう、絵もきれいだし、教育的な配慮から購読することになったのだと思います。

このシリーズの『秘密の花園』は文がこわせたまみで絵はなんと司修です。ちなみに9巻の『青い鳥』はいわさきちひろです。今、この巻をつぶさに眺めてみると、結構編集に力が入っています。この頃は子供の本をつくるにも企画が練られていたんですね。最初に「読むまえに」という欄でこれから始まる物語の簡単な紹介文があります。そして本編の後には、保護者向けの解説文が載せられ、作者のことや作品の背景などがカラー写真つきで詳しく書かれています。また、奥付には日本読書学会会長なる人物が教育的な視点からこの物語を子供にどう読ませるかといったことを簡単にまとめたりもしています。そして、最後に次の巻の予告があります。
この『秘密の花園』はゆっくり読んで20分くらいで読み終えました。実はこの絵本で読むのははじめてです。購入してから何十年目になるのでしょうか。子供時代は好きな巻ばかり繰り返し読んで、なんとなく見かけが気に入らなかったりしたものは全く読まなかったのですね。多分、この巻も表紙がピンク色の女の子の絵だったので、ちぇっ、なんだよ女の子向きかよ、とはなから無視していたのでしょう。今、初めて読んで、お話としてはなかなかいけてるんじゃないかと思いました。なるほど、人が自然によって生命力を回復していくというお話なのでした。今の季節に読むのにいいお話です。
このシリーズ、それほど意識していませんでしたが、思っていた以上の宝物になるかも。

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