2007/8/13
「“OUTSIDE” そして、3人のデヴィッド」
soundscape
ボウイの90年代以降のアルバムが先頃紙ジャケで復刻された。その中に1995年作品の『アウトサイド』があって、それがわたしの中で、ボウイのアルバムではベルリン時代の『ロウ』と並んで双璧をなす傑作だ。

このアルバムの曲は、知るところでは2曲が映画に用いられている。一つが“The Hearts Filthy Lesson”で、これはデヴィッド・フィンチャーの『セブン』に用いられていた。全編雨ばかりの陰鬱な画面が支配する映画の、ラストの砂漠のシーンでようやく快晴のカラリとした画面となったと思ったら、非常に後味の悪い物語の結末で、最後のエンド・ロールに流れるのがこの曲だった。
もう一つは“I’m Deranged”で、これはデヴィッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』の冒頭タイトル・バックと最後のエンドロールに流れる曲だ。疾走する闇のハイウェイの光景にマッチした非常にカッコいい曲で、当時映画で流れたこの曲を知って、即座にこの曲の入ったアルバムをレンタルに走ったのだが、それがボウイとしては久しぶりの『アウトサイド』だった。
ボウイとデヴィッド・リンチの関係がどこで始まったのかはわからないが、ツイン・ピークスの映画版でボウイが変なチョイ役で出ていたのを覚えている。
このアルバムは全編を通じて素晴らしい出来ばえだった。特筆すべき点として、架空の物語に基くコンセプト・アルバムだということ、その物語が猟奇的殺人を解明する探偵の視点で描かれており、物語も音楽も全編ダークな色調で蔽われている点にある。そして、70分強の全編を貫き、20曲弱の各楽曲のトーンに影響を与えているのがボウイとの共同プロデュースに名を連ねているブライアン・イーノその人である。
ボウイはこの主題で連作を予定していたということであり、27時間に及ぶ未発表音源を懐に抱え、アルバムもあと5枚程出す予定だったという。しかし、ボウイにしてはマイナーなイメージで万人受けし難い作風のせいか、それは具体化することなく、次作の1997年の公式アルバム『アースリング』ではまた曲調が変わってしまった(これもそこそこ良いのだけれど)。世紀が変わり、より世相は混沌としてきた感がある現在、『アウトサイド』の続編が待ちどおしいところである。映画のほうのデヴィッドも、世紀を跨ってよりダークな作品を世に問い続けているのだから。
“I’m Deranged”
なにも隠せはしない
自分の血を見て現実を知れ
鎖で縛った手を曇った空に掲げる
俺に一夜の優しさをくれ
お前の優しさが全て
孤独な生活にもう戻りたくない
気が変になりそうだ
どんどん落ちていく
絶望の淵へ落ちていく
だから一夜の優しさをくれ
冷たい雨に濡れる見放された俺
気が変になりそうだ

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