子供の頃にも一度読んだ本で「稲村の火」という
題名の本がある。
この物語は、こんな書き出しで始まる。
「これはただ事ではない」とつぶやきながら、
五兵衛は家から出てきた。
今の地震は別に激しいというほどのものではなかった。
しかし、長いゆったりとした揺れ方と、
うなるような地鳴とは、老いた五兵衛に、
今まで経験したことのない不気味なものであった・・・・
この物語の筋書きは、一人の老人が、
地震のあと海水が沖へむかって引いていくのを
見て、津波の襲来を予感し、高台にある自分の
家の稲村に火を放って村人を集め、
人々を救ったという話。
私財を捨てても人命の救助にあたった五兵衛の人間愛を
とおして、人命の尊さを教える防災教育の名作だろう。
小学生の頃に読んだこの本のことは覚えていた。
八重山を襲った大きな津波は1771年 明和の大津波。
この津波を経験した人はいない。
1960年 チリ地震が起きて、この宮古島に5mの
津波が押し寄せた。
これを覚えているオジィやオバァは多い。
与那覇湾の水が海底の石とともに沖に引いて
いったそうだ。津波が来るのはわかっていたが、
潮の引いたむき出しの海底にはねる魚を
みんなで捕りに行ったという。
今では海岸線に多くの建物が建ち始めた。
津波は必ず来るというのがわかっていても、
建設ラッシュが続いている。
