我こそ、最後の神なり!
クンカァン王 クルグラン

神聖期102年に起きたいわゆる〈最後の神戦役〉の中心となったのがこのクルグラン王である。
大魔軍を率いて聖都ウラナングを一度は占領した、悪名高いクンカァンの支配者だ。
身の丈1カイ(約3メートル)、馬の代わりに象を駆ったという巨漢は、無双の戦士であり、その力は素手で神をもくびり殺すと言われた。
その出自には謎が多く、自らの軍〈大魔軍〉を率いてクンカァンに現れる以前の彼の経歴についてはほとんど分かっていない。血筋も、係累も不明。彼こそ78年に失踪したハンムー大王クラビクそのひとだという者さえいるほどだ。
神聖期96年に前王ゴニクを殺して王位に就いたクルグランは、それまで土豪が割拠していたクンカァンを力でまとめあげ、自らの配下である大魔軍を10万超の巨大な軍に育てあげた。
その5年後には隣国カヤクタナに侵攻、モロロット王率いるカヤクタナ軍を撃破して、そのまま聖都へと迫った。
有名な「我こそ、最後の神なり」という宣言は、この侵攻の直前に行われたとされる。この言葉は前年の巫女姫の「最後の神が現れる」という不吉な預言に相乗りして自らをおそれさせる効果を狙ったものだというのが通説だが、まさに巫女姫の予言が的中したのだと考える説もいまだ根強い。
精強を誇ったカヤクタナさむらいが一敗地にまみれた理由については様々な説が唱えられているが、その理由として伝説にある常闇の魔物たちが大魔軍に力を貸していたという説もある。その人ならざる超常の力をもって、ほんらい土豪の寄せ集めでしかない大魔軍はカヤクタナを打ち破ったというのだ。巫女姫の預言を信じる人々はたいていこの説も支持している。
いずれにせよはっきりしたことはわからない。
102年の聖都奪還の戦いで聖都は灰燼に帰し、大魔軍は消滅、クルグランも死んだ。ハンムー、ヴォジク、ヴラスウル、カヤクタナの四国連合軍も大きな被害を被って、この戦争は五王国時代の終焉をももたらした。
クルグランはカナン全土で災厄の象徴のように忌まれているが、旧クンカァンの一部では、見捨てられた土地に(一時であれ)光をもたらした英雄としてあがめられている。

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